ザリくん

風立ちぬのザリくんのレビュー・感想・評価

風立ちぬ(2013年製作の映画)
4.6
高校生の時劇場で見た時も良かったが、ある程度時間を積んだ今改めて見たらずっと魅力的な作品だと感じた。

飛行や製造の過程を機械的直線ではない手描きで描くことにより、戦闘機の洗練された美しさ、そして儚さと憐れな末路を強烈に印象着けていて、こんなことは人と金を持っているパヤオにしか出来ない芸当だろう。オタク臭いエンジニアの世界も難解さを醸さずアニメーションの演出だけでサラッと魅せるのも上手過ぎる。

後半かけての人間模様は言うまでもなく良かった。大正から昭和へ、戦争に巻き込まれ死が身近にある人々が風立ちぬ時代の中懸命に生きる様を表現していた。
「美しいものを作りたい」その一心で家庭にもろくに帰らずものづくりをする主人公と、全部理解して床に伏すヒロイン、そして待っているのが今際に立ち会えぬ死別と戦争の殺戮歴史・・・なんという哀しい映画・・・ボロ泣きした。創作を司る悪魔カプローニさん、罪深いぜ・・・

夢の世界が入り交じるパートも、人間の知覚像を強調するパヤオのテイストとマッチして効果的に内在世界を表現出来ていたと思う。

肉声によるSEや例の監督の声優起用などチャレンジングなことも色々やっていたが改めて見るとこれしかないんじゃないか…てなる。来世アニメーターになったらパヤオアニメを擦りまくることを決意。

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2022年5月追記

当時のパンフレットを発掘した。
年月を積み重ねるごとに自分の中で風立ちぬがどんどんと大きくなっている気がする。
宮崎駿の最新作にしてものづくりの姿勢の原点に回帰する傑作。何度見ても泣く。
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