ただのすず

かぐや姫の物語のただのすずのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
4.4
御伽噺ではない生きているかぐや姫だった。

お姫様抱っこを拒んで地に足をつけ、
美しい着物を脱ぎすて、風と舞うように走って飛んだ。
アニメーションで飛ぶという表現の意味について深く考えたことがなかったけれど、
千と千尋では真名を思い出した時に、
かぐや姫は本来の自分の生きる意味、幸せを理解した時に飛んだ。
今も昔も人が犯す過ちは同じなのかな、何もかも満たされた地に落とされ生まれるのに、
その幸せが奪われて取り返しがつかなくなるまで気がつかない。
だから本当の幸せを知る為に何度も輪廻する。

ジブリのドキュメンタリー『夢と狂気の王国』で
宮崎監督が何度も、
人の幸せとは何だと思う?というシーンがあって、
監督は自分が幸せになる事が幸せとはどうしても思えないと呟いていてとても印象に残った。
自己を犠牲にして他者の望みを叶え続けた高畑監督のかぐや姫と
他者を犠牲にしても自己実現を果たした宮崎監督の風立ちぬ
本来は対になって上映されるはずだった。
何かを犠牲にしなければ何かを捨てなければ、得ることはできない。
正しさはなく、ただそれがあるだけ。
またきっと歳をとって私はこの作品を見て泣くだろう。
そのときには自分が何を捨て何を得ているのか感じることができればいい。


好きなシーンが書ききれないほどある!
絵も斬新なのに温かく、音もずっと耳に残る、役者の演技も確か、
ちょっと非の打ちどころがない、
どうして公開と同時に観なかったのだろうと後悔した。