YasujiOshiba

かぐや姫の物語のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

かぐや姫の物語(2013年製作の映画)
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娘がBDを借りて来てくれたので一緒に鑑賞。ようやくキャッチアップ。

それにしても、いやあすごい。こいつはファンタジーじゃない。ものすごく現代的で、ものすごいリアリティで迫って来るのに、時代を超える力を持つ、まさにアニメの古典だ。ともかく、竹から生まれてすぐ大きくなるところなんて、ぼくらの経験そのものではないか。子どもは、あんなふうにポンポンと大きくなって、手からこぼれ落ちてゆくものなのだ。

 そして人としての暮らしが始まる。そいつはいつの時代にも、本来的な生きる歓びからはどんどん遠ざかってゆく。そしていつの時代にも、ほとんどの人はそんな逸脱に気がつくことがない。それでも季節はめぐる。そこでぼくらは生きてゆくしかない。あらゆる命と同じように。だからこそ、高畑の手による『わらべ唄』はこんなふうに歌うわけだ。

「まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
 まわって お日さん 呼んでこい」

 わらべ唄はさらに続ける。

「鳥、虫、獣、草、木、花
 咲いて実って散ったとて
 生まれて育って死んだとて
 風が吹き雨が降り水車まわり
 せんぐりいのちがよみがえる
 せんぐりいのちがよみがえる」

この東洋的な生命のリアリズムにいかにして命を吹き込むか。それが高畑がめざしたアニメーション(命を吹き込むこと)にほかならない。まさに生きとし生けるものへの讃歌。あのアッシジのフランチェスコの「被造物の讃歌」を思い出してしまった。
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