MasaichiYaguchi

清須会議のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

清須会議(2013年製作の映画)
3.3
関ヶ原の戦いは「天下分け目の合戦」として有名だが、織田信長亡き後、戦国時代に終焉を告げる為の「清須会議」も血を流さない「天下分け目の合戦」かもしれない。
余りにも有名な史実で、様々なテレビドラマや映画で「軽く」ではあるが取り上げられているので「結果」は変えようがない。
この作品は、その「結果」に至るまでどのような「暗闘」が繰り広げられ、その「暗闘」に参加又は巻き込まれた人々のドラマを描いている。
以前「種田陽平による三谷幸喜映画の世界観展」に行ったことがあるが、映画のセット、「清須城」となるのだが細部に亘りこだわりがあって驚いた。
その美術展でも「注釈」が付いていたが、史実として「清須城」に天守閣があったかどうかは定かではないらしい。
それでも敢えて天守閣を持つ城にした理由が本作を観て納得した。
映画で主役たちが天守閣から下界を見渡すシーンが出てくるが、それはこの城が「天下人」を決める場所だからだと思う。
だから人々の思惑が渦巻き、対立する羽柴と柴田の何れについた方が有利かと周りの人々は右往左往する。
それは戦国時代を生き残っていく為の処世術。
藤吉郎を演じるのは大泉洋さん、柴田勝家を役所広司さんが演じているのだが、この芸達者な2人の演技合戦も見物である。
そしてこの2人を取り巻く俳優たち、丹羽長秀役の小日向文世さん、池田恒興役の佐藤浩市さん、寧役の中谷美紀さん、黒田官兵衛役の寺島進さん、その他端役に至るまで、この人がこんな役をと思う程豪華で正にオールスターキャストだ。
この作品を観て改めて、後に太閤殿下となる藤吉郎の人としての器の大きさ、巧みな権謀術数を含めた「人たらしぶり」に唸ってしまう。
逆に敗者となってしまう柴田勝家の純で真っ直ぐな人柄にも惹かれてしまう。
いつの世でも真っ直ぐで純粋な人は利用され、要領の良い人の「踏み台」にされてしまう悲しさが最後に余韻として残った。