プペ

クロニクルのプペのレビュー・感想・評価

クロニクル(2012年製作の映画)
3.4
「童貞をこじらせる」なんて表現がしばしば使われるけれど、この映画ほど″童貞をこじらせた″主人公を描いた作品は他に無い。
この映画の主人公は確かに不幸な境遇にあるけれど、彼の暴走と発狂の発端は、決して特殊なことではなく、世界中の「男子」の誰にでも起き得ることであり、普遍的であるが故に、同時に彼に対する同情の余地はあまりない。

しかし、だからこそこの映画が″描くこと″は極めてリアルで、身につまされ、ちょっと笑えない。

登場するキャラクター自身が撮影している体で映し出される「POV方式」で、ふいに超能力を得た3人の男子高校生の顛末を描いた今作。
「アイデア一発」の映画に捉えられがちだろうが、決してそんなことはない。
多くのPOV映画が、「リアル」というものをビジュアル的に安直に追い求めて失敗しているのに対して、この映画は必ずしもビジュアル的な要素に「リアル」の焦点を当てていない。

この映画がPOV方式をとった意味は、主人公をはじめとする現代の若者たちの「自己表現」の手段、詰まるところの「自画撮り」をストーリーテリングの「主眼」に据えるために他ならない。
他ならぬ私自身もまさにそうだが、SNS、スマートフォン……取り巻く環境に伴い、「自分を撮る」ということは、もはや屈折でもなんでもなく、世界中の若者にとって普遍的な自己表現の一つとなってきている。
「他者」との関わりを拒絶し、その距離感が広がれば広がるほど、自身の主眼はより内向きになり、必然的にカメラのレンズも自らを映し出すようになる。
それこそが、この映画がこの撮影方式によって求めた「リアル」だったのだと思う。

映画は、非常にミニマムで内省的な青春映画のように始まり、コメディからアクション、悲愴感が溢れる破壊衝動を経て、ヒーロー映画の秀逸な「前日譚」のような帰着を見せる。
綻びもあるにはあるが、そんなものどうでも良くなる程に、なんという発想の豊かさだろうと思える。

そんな映画世界を殆ど無名の若いスタッフとキャストで作り上げていることに、眩い輝きを感じる。
キャストで印象的だったのは、やはり主人公を演じたデイン・デハーン。
独特な鬱積を秘めた目と、滲み出る危うさは、若い頃のレオナルド・ディカプリオを彷彿とさせる。
既に注目作へのキャスティングも決まっているらしいが、今後の注目株であることは間違いないだろう。
プペ

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