ユースケ

パシフィック・リムのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

かつて日本のお家芸であった特撮と怪獣を日本人以上にわかっている外国人ギレルモ・デル・トロが最新の技術と12歳の少年の心で現代に蘇らせたSF怪獣映画。

伊福部昭の魂を継承した重厚なテーマ曲が巨大怪獣(KAIJU)と巨大ロボット(イェーガー)がしばき合う怪獣プロレスのはじまりの合図。怪獣の血(カイジュウ・ブルー)が有毒なので飛び道具が使えない設定の時点でわかってはいましたが、本作の目的は怪獣プロレスの再現なんです。怪獣の出現場所がクトゥルフ神話を思わせる太平洋の海底という設定もたまりません。

とにかく、【新世紀エヴァンゲリオン】のプラグスーツを思わせるパイロットスーツや【マジンガーZ】のパイルダーオンを思わせる操縦ユニットと巨大ロボットのドッキングなど、日本のアニメーション作品へオマージュを捧げたシーンを細部まで徹底的に描き込み、フィクションの世界にリアリティを生み出したディティールへのこだわりが素晴らしい。コレジャナイ感漂うデザインも納得させてしまうクオリティです。

更に、二人のパイロットの動きと巨大ロボットの動きとシンクロさせ、観客を物語にシンクロさせる【ジャンボーグA】+【新世紀エヴァンゲリオン】を思わせる操縦システム【ドリフト】も秀逸。
特に、翼の生えた怪獣オオタチに宇宙に連れ去られたジプシー・デンジャーが「家族の仇を取ってやる!」のセリフと共に蛇腹剣=チェーンソードでオオタチの翼を切り裂くシーンはテンアゲ。

おまけに、【戦え!超ロボット生命体トランスフォーマー】のコンボイ司令官を演じた玄田哲章、【機動戦士ガンダム】のアムロ・レイを演じた古谷徹、シャア・アズナブルを演じた池田秀一、【機動警察パトレイバー】のシバシゲオを演じた千葉繁など、ギレルモ・デル・トロの日本のアニメーション作品への愛情に応える豪華な日本語吹替声優陣の起用にも注目。日本語を話せる菊地凛子に【新世紀エヴァンゲリオン】の綾波レイを演じた林原めぐみの声を当てさせる気合の入れようには脱帽です。

オープニングのゴールデン・ゲート・ブリッジを破壊する怪獣アックスヘッドと漁船を襲撃する怪獣ナイフヘッドでレイ・ハリーハウゼンの【水爆と深海の怪物】と本多猪四郎の【ゴジラ】にオマージュを捧げ、エンドクレジットの最後に「この映画をモンスター・マスター、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」のメッセージをぶちかます怪獣映画の道を開いた二人の神へのリスペクトも見逃せません。

ちなみに、推しイェーガ―は原子炉丸出しの危険なデザインとネーミングがたまらないチェルノ・アルファ。無骨なファイトスタイルと脱出装置を持たない覚悟はまさに男の浪漫。【機動戦士ガンダム】の黒い三連星の必殺技ジェットストリームアタックを思わせるクリムゾン・タイフーンのサンダークラウド・フォーメーションも要チェックです。