すずき

モンスターズ・ユニバーシティのすずきのレビュー・感想・評価

3.9
モンスター達の世界の憧れの職、それは人間の子供を怖がらせる「怖がらせ屋」だ。
マイクはその見た目から、人間を恐怖に陥れるには向いていなかった。
だが彼は必死に勉強し、その結果、名門大学の「怖がらせ学部」へと進学する。
エリートコースを夢見るマイクだが、そんな時に同じ学部のサリーと出会う。
サリーの父親は怖がらせ屋界での有名人で、彼も父親譲りの恐ろしい風貌を受け継いでいる。
サリーはマイクの努力を一笑し、2人は敵視し合うようになるが…

ピクサー長編アニメーション第14作。
「モンスターズ・インク」の前日譚。前作を知らなくても問題は全く無し!
私、前日譚とか過去編が苦手なんだけど、これは前作より面白かった!
そもそも、前作自体がそんなに個人的評価高くないのだけど。

ストーリーは、なんやかんやあって、ライバルの2人がドン底で協力するハメになり、弱小チームで優勝を目指す青春友情スポ根モノ。
嫌なヤツはいるけれど、明確に倒すべき悪や敵はいない。

凄く良かった所は、後半の展開。
安易な子供向けのアニメでは、いかにも綺麗事と欺瞞的な展開になる事がある。
どれとは言わんが、ピクサー作品でもご都合的ハッピー展開が気になった作品もあった。
しかしこの作品では、そういったご都合展開へのアンチテーゼをしつつも、子供達への寓話としても上手く纏められている。

少し具体的に言うと、マイクが逆転勝利をする所。
安易な展開なら、マイクは日々の努力によって身体的ハンデに打ち勝ち、勝利によって物語を閉じる。
本作も、そんなフワッとした口当たりのいいカタルシスだけの作品と思わせておいて、その後に更に一波乱ある展開を用意する。
人は生まれた時点で不平等であり、努力では埋められない壁も存在する、そんな苦い現実に、目を背けずに描写する。
しかしそれでもお前には出来る事があるんだぜ、と才能に恵まれない負け組達へのエールを送る本作のテーマにグッと来た。

ラストのオチも、やらかした主人公の責任をご都合によってなぁなぁにせず、キチンとケジメはつけさせる。
しかしそこから、主人公は自ら選択をして、自分の運命を掴み取った所が素晴らしい。
マイクが当初に思い描いた未来予想図とは少し違うかもだけどさ。

前作でのマイクとサリーは、エリート社員で最初から「持ってる」人たちだったけど、本作を先に見ていればまた見方も変わるかも…?