Rui

まぼろしの市街戦のRuiのネタバレレビュー・内容・結末

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

独軍に支配されたフランスの街。彼らが仕込んだ爆弾の処理を命じられた伝書鳩係のプランピックは、住人たちがもぬけの殻となった街が精神病棟から開放された患者たちで溢れている事態に遭遇する。最後は鉢合わせた英軍独軍共々滅び、それを傍観する患者たち…という構図で終わる。

どなたのものだったのか忘れてしまったのだがなるほどと思わされるレビューがあり、「最後わざと解放軍を画面から消し、主人公だけがまた現れるよう撮ったのは、あのラストは彼の願望なだけかもしれない、という解釈を可能にするため」。

ユートピアの世界に迷い込み、その狂った様子を描きつつ、しっかりと腑に落ちるオチがある反戦映画。果たして狂っているのはどちらか。ここでは兵士たちを滑稽に見せこき下ろしているので、"兵士たち一人一人を馬鹿にするな。彼らは選択の余地がなかっただけで悪いのは国家だ"と不愉快に感じる人も少なくはないだろう。一見馬鹿馬鹿しく滑稽なコメディに見えて実は奥が深い反戦映画だと思う。患者たちも頭が狂った阿呆のように描写されるが、その目に映っているのは紛れもなく私達と何ら変わらない世界であって、やや冷えた目の表情からも、成りの果てをどこか分かっているように感じる。精神病棟に入れられたのも、彼らをそんな状態にさせた何らかの出来事を経験したからであって、その社会に疲弊し逃げる手段としてお花畑的言動を取るようになったのかもしれない。汲み取ろうとすれば、人によれば無限に汲み取れるものがある映画である。新たな視点を提示してくれ、思考のベクトルを増やすことを余儀なくされる。
Rui

Rui