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まぼろしの市街戦のsensatismのレビュー・感想・評価

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)
3.5
精神病棟から解放されたのに町からは出て行こうとしない患者たちの姿が、開け放された檻から出てこようとしないサーカス団に飼い慣らされたライオンと重なるようで物悲しい。
自由と安全は半径5m以内にあるのかもしれない。

銃撃戦を見届けて興醒めする町の住人たち。
ゾロゾロと病院へ帰ってゆく。
精神病院、なので精神に異常を来した人間たちが暮らしているのだろうが、外の世界では殺し合いが行われている。病気に侵されているのはどちらの世界なのだろうかと考える。
軍服を脱ぎ生まれたままの姿で病棟の前に立つチャールズは生きることから降りたようにも、戦争から解放されたようにもみえる。

WW1の時代、敗走していたドイツ軍が占領地・北フランスの田舎町に爆弾を仕掛け、その情報を得たイギリス軍がフランス語が流暢な通信兵(チャールズ)に解除を命じ、彼は北フランスへ向かう。町でドイツ軍と鉢合わせてしまい、逃げ込んだ先の精神病棟で患者のフリをしてやり過ごすが、本物の患者たちに正体を聞かれ、「ハートのキング」と自称することに。チャールズが開閉した病院の扉から患者たちは抜け出し、貴族から果ては娼婦まで思い思いの衣装に扮装、役に没して町を浮遊する様子はさながらベルエポック時代に戻ったかのような異様な雰囲気に町は包まれる。
時計台の機械仕掛けに解除のヒントがあると分かったチャールズは見事爆発の回避に成功する。イギリス軍は町の偵察にはいり、ドイツ軍は解除成功の祝いで花火代わりに大砲を打ち上げたさまを爆破成功と勘違いしたドイツ軍も町に進軍する。両者は鉢合わせ、白兵戦となりどちらも降伏を譲らなかった結果、全滅する。その直後、解放軍が町を訪れ町は救われる。チャールズは次の任務へ赴任する道中、1人こっそり抜け出し真っ裸で精神病棟の前に立ち門を叩く。
次の場面、チャールズは病衣に身を包み仲間とともにカード遊びに興じるシーンで幕を閉じる。
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