ryosuke

ホーリー・モーターズのryosukeのレビュー・感想・評価

ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)
3.9
映画史をまるごと抱え込んでやろうとするカラックスの気概が凄い。時折挿入される初期映画の映像、モーションキャプチャーに「インターミッション」、ゴジラのテーマ(これは流石にテンション上がる)、エディット・スコブを再び「顔のない眼」にする遊び等からカラックスの映画への愛が伝わってくる。主人公の名前も「オスカー」。
ドニ・ラヴァンが街で演ずるものを中心として、映画のシーンの数々は、死、暴力、家族、愛、狂気、エロス、別れ、自動車、ホラー、ミュージカルとこれまで映画をその不可欠の要素として構成してきたものたちの乱れ打ちになっている。
シーンはひたすら羅列されるだけなので、物語としての求心力はほぼ無い。でもワンシーンワンシーンのアイデアが面白いからそれでいいのかな。前評判から期待し過ぎていたので若干肩透かしには感じたが、十分楽しめた。
冒頭の映画館の観客の映像に不思議な気分になる。まるでスクリーンが消失して一枚の鏡になり、観客である自分たちが映し出されているかのような錯覚に陥る。これは映画館で、しかも座席数がそこまで変わらなそうなユーロスペースで見たからこその感覚だな。
ドニ・ラヴァンの百面相っぷりは凄まじい。やはりメルドの怪演がインパクト大。
「時間は僕たちの味方じゃないようだ」というセリフや自動車たちの会話は「映画」の側からの嘆きなのだろうか。
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