回想シーンでご飯3杯いける

ラ★バンバの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ラ★バンバ(1987年製作の映画)
3.7
「ランバダ」とごっちゃになりそうだけど、こっちはメキシコ民謡の「ラ・バンバ」をロックアレンジして大ヒットさせ、17歳の若さで他界したアメリカのミュージシャン、リッチー・ヴァレンスの活躍を描いた実話物。

まず、ビートルズ前夜とも言える'50年代後半を再現した音楽が良い。リッチーの音楽をリメイクしているのは、彼と同じメキシコ系アメリカ人で結成されたロス・ロボス。リッチーの音源はさすがに現代の耳で聞くと地味に感じてしまう部分もあるのだが、ロス・ロボスによるアレンジ・ヴァージョンは、この映画が公開された'80年代っぽい華やかさがあって、聞いているだけでワクワクする。エディ・コクラン役で登場するブライアン・セッツァーも格好良い。

リッチーで印象的なのは、ケースに入れずに絶えず裸のまま抱えているギター。これはシルバートーン製の安価なモデルなのだが、後半で彼が成功すると、ケース入りのフェンダー・ストラトキャスターに持ち変えている。こうした細かな部分の演出も粋で、音楽映画として非常に中身の濃い作品に仕上がっている。

彼はもうこの世にはおらず、本作の終盤で死んでしまう事を僕達は既に知っている。つまりこれは死へのカウントダウンを描いた作品でしかないのだが、そこでもずっと熱いロックンロールが流れ続ける。それは楽しくもあり、切ない光景。音楽を通じた珠玉の青春物語である。