takanoひねもすのたり

アンチヴァイラルのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

アンチヴァイラル(2012年製作の映画)
4.0
再鑑賞。

近未来、セレブと彼らを崇拝するファンの間では、セレブが罹った病気のウィルスをファンも罹りたがり、セレブのコピー肉(クローン培養肉)も飛ぶように売れ、ファンビジネスとして確立している世界(美容整形の一種or娯楽として受け入れられている)
主人公シド(ケレイブ・ランドリー・ジョーンズ)は、この業界一位のクリニックの技術者+販売員。
彼は副業で闇ルートにセレブのウィルスを卸していたが、あるトラブルに巻き込まれてゆく……というSFディストピア物。

崇拝するセレブのウィルスもコピー肉も体内に……同化願望なのかなあ……。
医者からして「セレブの皮膚を腕に貼るのは何ものにも変えがたい……」とうっとりするくらいなので、この作品の中の人類、崇拝の概念が恐ろしいくらい対象との距離が近い。

コピー肉……といってもそれ『人間の』
カニバリズムへの忌避感も無さげ。

正気すか?というセレブへの崇拝は、どっちかというと『消化』『同化』『食べる/(ウィルスを)入れる』の欲求が顕著に描かれている反面、性描写が全く無い。

画面の構成は神経質なくらい白を基調にしており、差し色は黒と赤。
徹底的に潔癖な演出。
でも性的なメタファーが頻繁にある。
擬似セックス的な交歓を得てる……という匂わせなのかなあ……とぼんやり。

無表情か苦悶しているかゲボっているシド君は、大人気のセレブ、ハンナ・ガイストだけは特別な存在らしく、恋情ではなさそうなんだけれど執着心があるらしい。

ラストシーン、あれは直喩的でエロいよなあ。
行為そのものより、共有することが、セックスと同等(かそれ以上)の歓びなんだろうか。

物語はシド君がチートして体内に入れたウィルス(ハンナ・ガイストのもの)のせいで、病気になったり、闇界隈からボコられたり、監禁されたり、掌返しで一発逆転かましたりと、結構ハードな展開を辿り。

最初は(うげげ……どんな特殊嗜好なんや……)と突飛な状況に戸惑いつつ、本筋がきっちり組み立ててあるのと、余分な物を排した演出のおかげで、キレキレのSFディストピア物として仕上がっていると自分は思う。

How do you feel right now?

いまどんな気持ちだい?