にく

ペトラ・フォン・カントの苦い涙のにくのレビュー・感想・評価

4.7
R・W・ファスビンダー『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(72)。これを初めて観たのは、ずっと同じ映画ばかりをかけるカルチェ・ラタンの名画座で、フィルムが傷だらけだった。今回のレストア版のお陰で、本作が、プッサンの『ミダスとバッカス』を引合いに映画の絵画性をも追求する会話劇だと気付く。
 だから俳優の表情の動きも含めて、身体的な運動は極力抑制されており、それを部屋に置かれたマネキン、いやそれ以上に常に画面奥に不動のまま佇むマレーネの身体が象徴する。むしろ、グラスや電話といった小道具の扱い、ちょっとした仕草にこの映画の運動性は宿り、会話がもたらす緊張に拍車をかける。
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