佐藤でした

ブエノスアイレス恋愛事情の佐藤でしたのレビュー・感想・評価

ブエノスアイレス恋愛事情(2011年製作の映画)
4.0
急激な発展を続け、様々な建築物が混沌と立ち並ぶ大都会ブエノスアイレス。

フリーでウェブデザイナーをしているマルティンは、あらゆる怖いものを回避しながら、元カノが残した犬ススを可愛がるだけの引きこもり生活を送っている。

マリアーナは4年間付き合った恋人と別れたばかり。建築家になって2年が経つが未だに何も造っていない。今はショーウインドーの装飾の仕事をしている。愛読書は“ウォーリーをさがせ”。

向かい合うマンションに住むマルティンとマリアーナ。平凡で低刺激なそれぞれの日常をコミカルに描く。


‥この映画に「友達」は出てこない。女同士あるいは男同士の、最近どーよ?的な横の関係がない。
人が2人いる場合は常に、男と女、女と男。恋愛対象である2人が正面で向かい合っている。
だから何となく落ち着けない。それに油断できない。主人公の男女なんて、いつ何時、バッタリと運命の出会いを果たすかわからないからだ。

日頃、隣人のピアノの音漏れにイラっとしているマリアーナ。でも壁際に座って聞き入ることもあった。ある時流れてきた悲しげな曲が今の心境に寄り添い過ぎて、イラっ。ドスンと壁を叩くと、静寂の後、希望的なものに曲が変わった。

人々は平行線で、別々の世界を生きているようだが、壁を隔てて暮らしている。

建築物を愛するマリアーナの言葉も印象的。
「電線で空を塞いだのはだれ? 何キロにも渡って繋がる電線は、人を繋ぐため? それとも遠ざけるため?」

わからない。でも今もSNSでこうして、その時代を生きている。出会わなきゃ、とは思いながら。壁を隔てて暮らしている。

ラストシーン。だいすき。グッドアイデア。
目に見える“隔てるもの”や、目に見えない“怖いもの”を全速力で突破するマリアーナがたくましく、可愛らしかった。
佐藤でした

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