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真木栗ノ穴のkitoのレビュー・感想・評価

真木栗ノ穴(2007年製作の映画)
3.2
期待とは違ったものの、それなりに面白かった。

観始める前は何となく「異人たちとの夏」のあのノスタルジックな感じを期待したのだけれど、終盤以外はずっと青春エロコメのような雰囲気で、ホラーというよりは微エロ怪奇譚といった感じ。

原作は山本亜紀子のホラー小説。未読だけれどのぞきも小説で読むのと映像で見るのとではけっこう違う気がする。ストーリー展開は「牡丹灯籠」「異人たちとの夏」風ではある。まあ、嫌いな男子はいない”のぞき”モノなので、気分が合えば面白く観られるだろう。一方、女子的にはどうだろうか…

売れない貧乏作家を西島秀俊が演じている。15年前の作品なので若い。しかも、隣部屋の気配を探りながらボロアパートの壁の穴に飛び付かんばかりに覗き込むという、おおよそ現在のイメージとは真逆な役柄。今の彼的にはもはや”黒歴史”なんじゃないだろうか。

そのほかの出演者も顔を知っている有名どころで、決して低予算感はないのだけれど、どうしてものぞきという行為により決定的に安っぽいムードが醸し出される気がする。

舞台は鎌倉。西の尾道、東の鎌倉といった感じで街に良い雰囲気がある。鎌倉七切通が冒頭と最後のシーンに出てくる。行こう行こうと思っていたのに、結局行かずじまいになった場所の一つで、いつか訪れてみたい。

エンドロールの手前に以下の引用が出てくる。つい最近、他の映画かアニメでも見たのだけれど思い出せず、あれこれググっても誰の言葉かすらわからなかったーーのだけれど、Chat GPTで調べ直したら瞬時に「フィリップ・K・ディック」と返ってきた。凄さを実感。(アニメ「PSYCHO-PASS」で引用されていたのを思い出した。)


この世に矛盾が蔓延り、終末が近づいている。
どうやら私たちの世界が
ある一人の男の空想である事が
近く発表されるだろう
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