たつなみ

オンリー・ゴッドのたつなみのレビュー・感想・評価

オンリー・ゴッド(2013年製作の映画)
3.5
レフン監督の作家性を知りたくなり鑑賞。

これまで観た作品にあった激しいバイオレンス性はあるが、幻想的で理解に苦しむシーンがとても多い。
ラストで出てくる『ホドロフスキーに捧ぐ』というメッセージからして、恐らく本作の様な前衛的な作風がレフン監督の求めているモノだと思われる。

今回のライアン・ゴズリングはカッコいいが超情け無い役回り。
彼よりもタイ人俳優のヴィタヤ・パンスリンガムが圧倒的な存在感を発揮している。
彼自身が本作の世界では『法』であり、『秩序』であり、いわば『神』でもある。
ひと仕事終えた後にカラオケ(めっちゃうまい)をひとしきり歌う所も妙に愛嬌がある。

そしてゴズリングの母親役のクリスティン・スコット・トーマスのクソビッチぶりが素晴らしい。
信じられない程の自己中で差別主義者。
しかも劇中のセリフから自分の息子たちのムスコたちも思いのままにしているらしい…。

冒頭からジュリアン(ゴズリング)はしきりに自分の掌を見ている。
また、物語の途中でジュリアンは素手で父親を撲殺した事が明らかになる。
ジュリアンにとって手は”罪“の象徴という事なのだろう。
チャン(パンスリンガム)が冒頭とラストで”裁き“の際に行う『ある行為』からもそれは分かる。

そしてジュリアンは母親の呪縛から抜け出せないながらも、それに逆らう彼なりの微かな倫理観が感じられる。
絶対的な正義を司るチャンとの邂逅により、ジュリアンはその微かな”光“に気づき、ラストのあの行為に繋がったのではないだろうか?

原題は『Only God Forgives(神のみが赦し給う)』。
チャンの存在が『神』のメタファーだとすると、贖罪をテーマとした作品…ということでいいんだろう。多分…。