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エンド・オブ・ウォッチのHIROのレビュー・感想・評価

エンド・オブ・ウォッチ(2012年製作の映画)
3.8
ロサンゼルスの一角に位置する重犯罪多発地区サウス・セントラル地区を担当する白人巡査テイラー(ジェイク・ギレンホール)とその相棒であるメキシコ系巡査ザバラ(マイケル・ペーニャ)。パトロール中にメキシコ麻薬カルテルの秘密に触れてしまったことで、2人は組織から命を狙われるようになってしまうお話。

複数の登場人物の持つカメラ映像を中心に物語が進行する。

全編通してとてもリアルで、臨場感に溢れていた。
警察24時をさらに激しくしたような作品。
ただ警官を長回ししてるだけの映画かと思っていたけど、内容もしっかりしていた。

この作品の舞台は日本では考えられないくらいの治安の悪さで、麻薬、銃撃戦、暴力は日常茶飯事。
主人公の2人が職質しただけで発砲されたり、「民間人の祖母の音沙汰がない」という通報を受け見に行ってみるととんでもない結果が待ち受けていたり。
ロス市警の苦労は痛いほど伝わってくるのだけど、2人はあまりそれを引きずらない。
それだけ凶悪犯罪に慣れているということで、ゾッとした。

特に良かったのは、主人公の何気ない日常と、凄惨な事件を対比させて描いていたところ。
パトカーの中での2人の下らない雑談やテイラーの結婚、ザバラの妻の出産。そんな幸せな出来事が一層物語を引き立てる。
また、暴力が引き起こす結果を描いていたところもいい。
生ぬるい暴力ではなく、その先に待ち受ける残酷さや厳しさをきっちり描いているところはげんなりしつつも、現実を思い知らされる。

パトカーの中での雑談は2人にとっては全てなわけで、それは危険地帯の中でのほんのひと時の安らぎでもある。
だからこそあのラストはとても衝撃だし、ロサンゼルスの不条理さを目の当たりにすることができた。

題名の「エンド・オブ・ウォッチ」とは1日の終わりに、警察官に義務づけられた業務日誌記録の最後に記入する言葉と"見回り終了"という意味と"殉職"という意味があるらしい。
様々なメッセージが込められた優れた題名だと思う。

思いがけない秀作で、警官というお仕事を覗くにはちょうどいい作品だと思う。
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