明石です

小さな悪の華の明石ですのレビュー・感想・評価

小さな悪の華(1970年製作の映画)
5.0
「罪を犯すことが私達の務め。私たちは人生を神であるサタンに捧げる」

修道院学校で育てられ、夜な夜なボードレールの『悪の華』を読み耽り、昼は犯罪行為に耽溺する二人の少女。犯罪によって結ばれ、双子の契りを交わしたものの、犯罪への欲求がエスカレートしていき、引き返せない地点まで行ってしまう。法の手が彼女らを引き離そうとしたとき、二人が取った行動とは、、

久しぶりに強烈な映画を観た、、寓話的で美しい映像に、教会音楽風のメランコリックな楽曲、そしてグロテスクな物語。少女たちの残虐行為が、草木を枯らすことに始まり、牧畜用の牛を逃がし、干し草に火をつけ、小動物を殺す。最後には、ごく自然ななりゆきとして、人間を殺めるようになる。こういう話好きなんよね、という私の性癖のど真ん中を突いてくる、、今年の私的ベストテンに間違いなく入ると思う。

双子の少女の悪行を描いた作品には、かのピーター·ジャークソンがニュージーランド時代に撮った『乙女の祈り』がある。血の繋がりを超えた少女二人の結びつきが、残虐行為に繋がってしまうという筋はおおむね同じだけど、あの映画にはあくまで、二人の仲を邪魔立てする人間を排除したいという人間的な動機が見える分、共感ができた。この『悪の花』にはそれがない。表向き、動機らしい動機はなく、突き詰めると彼女らのそれはただ快楽のためにのみなされる行為。大人がセックスに耽るように犯罪に耽る。その、理屈としてはわかっても本能的には拒絶したくなる感じが気持ち良いのよ、、

個人的に「犯罪行為を犯す子供」を題材にした作品には前々から興味があって、『悪い種子』も『マイキー』も『危険な遊び』も大のお気に入りで、大興奮しながら(何度も繰り返し)観てきた。本作は、私がこれまで観てきたアメリカ映画の子供怖いホラーのどれとも違う質感があって、それは多分、画面や音響の美しさとはまた別に、少女たちの醸し出すマセたエロティシズムにあるような気がする。サイコパス気質のある子供は一般に大人びていて、性の発達も早いというのが通説ですが、本作の少女はまさにそんな感じ。

発達途上ゆえの官能をそそる肢体(と書きつつ私は残念ながらロリコンではないので彼女らの官能性についてはいまひとつ実感が持てず)を前に、欲情をかき立てられた大人たちが、地位や立場を捨てて彼女らの体に飛びついた時、わが意を得たりとばかりに復讐に出、大人たちを懲らしめてしまう少女たち。それが胸糞悪いようで、それでいて不快ではないようで、、少女たちの、性を振りかざして誘惑し殺すという一連の流れを飽きもせず繰り返す感じがもはや美学なのよ笑。

ラストの詩の朗読のシーンは圧巻でした。私の不勉強のせいか、あの素晴らしい詩が本作品のオリジナルなのか、引用なのかは判別できず(多分オリジナルだと思う)。この詩がとにかく音楽的で耳に心地いい。観客席の人たちが狂気に取り憑かれたように拍手を送るのも頷ける。少女たちが自分の体に◯◯する演出に関しても、CGがまだなかった時代ゆえの少しもっさりしたVFX(なんて横文字で書いてみても実際にはほとんど子供騙しのレベル)にぜんぜん目をつぶれるくらい素晴らしかった。こんな突き抜けた映画に出会えるとは、、しかも70年代。フランス映画の懐の広さは本当に恐るまじですね。
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