ちろる

ドリーマーズのちろるのレビュー・感想・評価

ドリーマーズ(2003年製作の映画)
4.7
退廃的で何故か艶めかしいパリの若者の世界観をベルトリッチ監督の映像美で表現したような作品。

親のお金を当てにしながら、現実を避けて、自分たちの夢の世界で自堕落な生活に身を興じる主人公たちの姿は、まるでボリス ヴィアン原作の「うたかたの日々」の主人公たちのようで、個人的にはかなりツボな世界観でした。

洗練されて、どこか不思議な魅力を持つ一卵性双生児に惹かれてしまった主人公マシューの好奇心は、いつの間にか蜘蛛の糸の様に絡まり身動きが取れないほどになっていく。

インモラルな性や愛の交わり方も美しい彼らの身体で表現されれば、それは芸術のよう美しく、魅惑的な三角関係は、なにか見てはいけないものを覗き見しているような気分になっていた。

始まりこそ流し目で口にタバコを咥えながら、2人の男の愛を弄ぶようにして女王様然としたイザベルが、時に映画の世界に閉じ込められたようなシネフィル(映画狂)な不思議少女の顔を持ち、また時にはテオの愛を必死で確かめようとする純粋無垢な乙女にもなる姿には本当に目が離せない。
年齢以上の独特な色気を備えながら、可憐な少女らしさも併せ持つ魅力的なイザベル。時折見せる美しいヌード姿も含めて思わずエヴァ様と呼びたくなるさすがの風格でした。

現実から目を背け、夢の中に暮らしているどうしようもない彼らの世界にどっぷり浸れたので、3人が五月革命の前夜にあっけなく現実の中に飲み込まれていくシーンがなんか夢から覚めたようで寂しい。
あのままリビングに置かれたティピーの閉鎖的空間中に閉じ込められた夢の住人のままでいて欲しかったな。

ジミヘン、ドアーズ、フランソワーズ バーディー、エディット ピアフ など60年代の音楽が所々に散りばめられ、ヴィンテージ感あふれた、迷路のようなアパルトマンの中で繰り広げられる三角関係は、奇妙ではあるけど何故か不自然ではなく、パリという舞台のせいかその愛の形さえもおしゃれに感じました。

ちょっと内容が特殊ではあるので友達には勧めにくいけど、このなんとも言えない独特な世界観はこっそりとお気に入りです。
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