アラジン

永遠の0のアラジンのネタバレレビュー・内容・結末

永遠の0(2013年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

物語は現代の主人公が自身に本当の祖父がいることを知り、僅かな情報を辿り、当時を深く知る生存者が語る戦時中の回想で構成された作品。

<ストーリーを振り返りながらの感想を記しておきます>

実祖父である宮部久蔵は、国のために命を投げ出すのが当たり前の戦時中において「海軍航空隊一の臆病者」「命を惜しむ男」だったなど当時を知る元戦友から聞かされる。。。

しかし宮部の部下だった井崎は違った。
零戦の凄腕操縦士であったゆえ宮部の零戦は無傷で帰還するので逃げ回っていた臆病者と噂されても仕方なかったと。
その他にも冷静な戦眼を持ち合わせていた事が伺える。
真珠湾攻撃でも空母を見つけられず叩けなかった以上作戦は失敗だと語り、後のミッドウェー海戦で所属する空母「赤城」を失う際にも戦術眼を見せている。
(彼のような人物の現場の声は戦略上重要意見として上層部が聞き入れられる組織であれば…と思ってしまうね)

自分一人が死んでも戦局に大きな変化は無いが残してきた妻子の人生は大きく変わってしまうので生きて帰る事が何より大切だと語り、
「どんな苦しい事があっても、生き延びる努力をしろ!」と怒鳴られた言葉が後に死の淵から生還して今があると語る。
あの時代にはとんでもない考えであり、そのような生き方を貫けた宮部は強い男だと。


宮部が予備学生兵の教官(予備士官)時代に、学徒出陣で駆り出されていた過去を持つ武田からは、訓練中に貴重な飛行機を潰し事故死した伊藤に対し「敵とまみえる前に死ぬとは軍人の風上にも置けない不忠者だ」と罵る上官の少佐に対し、意を唱えボコられるが、若者に対し誇りを示し命を落とした仲間の名誉を守ったことで臆病者と陰口を叩いていた教え子達から全幅の信頼と敬服されたことを聴く。


そして圧倒的な飛行技術がありながら乱戦を避ける宮部を憎んでいたという景浦。
空戦中、試されて宮部を狙い射撃レバーを引いてしまったことと、圧倒された宮部を撃ち落とすまで死ねないと誓っていたことを告白。
しばらく配属先が異なり、その後再会した時は同じく古参の戦闘機搭乗員として直撃機で特攻隊の援護する任務につくのだが、そこでの宮部は教え子を含む若者達の無情な特攻作戦で失われる尊い命で自分が生きながらえている事実に心を病んでいた。
ある日特攻隊に志願し、まるでウチに帰れるようなスッキリした表情で片道分の燃費しか積んでいない零戦で飛び立つのだった。
その際に旧式である21型に乗り換えて出陣しており、本来搭乗するはずだった51型はエンジントラブルで敵陣まで行けず不時着し、その搭乗員は生還していることを現代で聞かされ、その日の特攻隊員名簿が手渡される。


宮部久蔵の代わりに生き延びたのは、なんと祖父である大石賢一郎だった。
大石は学徒出陣していた際の教え子で、空戦中に宮部教官の窮地を身を呈して助けた過去があり、その恩義もあったのだろう。

生還することに執着するも何故か十死零生の特攻隊に志願し、生き延びれる可能性もあったが手放した心境について、「とても言葉に出来るような事ではない」と奥深さを残す。
はっきりしているのは彼は死ぬのを恐れていたのではなく残された妻子の人生が壊れてしまうのを恐れたのだという事。


生還できなかったが、妻松乃との約束は守ったのだと思う。
詳しくは描かれていないが戦後ヤクザに囲われそうになった松乃を救ったとされる人物というのは景浦だろうという事ね。


ラストシーンのみ、誰かが語った宮部久蔵の回想ではない描写で締め括られている。
それまで近づく事すら厳しかった米軍母艦の砲撃と護衛戦闘機を見事かいくぐり空母上空を取り、特攻態勢で魅せた最後の不敵な笑みにこそ零式艦上戦闘機とその操縦士である軍人の誇りを表現したのだと解釈しておきます。


誰もがそれぞれの“物語”を持っており、戦争時代を生きた人達の心境など我々現代人には計り知れない。
ましてや宮部久蔵が特攻隊に志願を決意するに至る心境は奥深過ぎる。
作品を通じて、それぞれ登場人物の気持ちを思うと涙無しには観られませんでした。
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