以下ほんのりネタバレと考察です
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"avoir des papillons dans le ventre"
フランスでは相手のことを思って胸やお腹がきゅっとするような恋心のことを"お腹の中に蝶がいる"というらしい。
そういえばロランスとフレッドがはじめて出会ってデートに誘った時に手渡した針金のモチーフは蝶だったし、別れ話をした時にロランスの口から出てきて飛んでいったのも蝶だった。
情報量の多さに観終わったあと茫然としていたけど、しばらくしてからじわじわと何かが溢れてくるのは映画の中でも感情が溢れる描写が散りばめられていたからかもしれない。
雨や雪や息もできないほどの大量の水や…いろいろなものが心象世界から現実の画面に滲み出て溢れて降り注いできていて、冒頭と中盤に出てきた乾燥機から出したばかりのホカホカでふかふかの洗濯物をバサバサとかぶせるのは幸せの象徴だったし、カラフルな洗濯物たちが降りそそぐ中二人で歩くシーンは幸せの絶頂だったのだろう。
思えば「服」というのが一つの枷だったのかもしれない。
彼らが服を脱ぎ捨てている時が一番自由であったように思う。
そしてあの降りしきる落ち葉は、ロランスとフレッドが10年かけて(観る者は約2時間半をかけて)到達した一つの季節の終わりだったのだろうな。
たとえ一緒に居られなくても誰かを思うだけでもうそれは愛でそれがすべてじゃないか。