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ウォッチメンのpikaのレビュー・感想・評価

ウォッチメン(2009年製作の映画)
5.0
3回目くらい。長いのでなかなか見返すのは腰が重いけど見始めるとやっぱりホント面白い!
見ていくたびに魅力が増していっているような、味わいが深くなっていくような、ラストの問答は本当に面白いし素晴らしいしアクション映画の体でこう締めるとは独特稀有で心底唸る。
周りの人に「ウォッチメン」の話を出すと「まぁまぁ面白い」というのと「原作が最高なので原作を読んで」という二局に分かれ、映画単体で最高!と言う人になかなか出会えないんだけど、逆にこの映画自体が好きすぎて、このテーマをこの表現で見てしまったがゆえに原作を手に取るのが怖いところがある。

法律によりヒーロー活動が禁止され「元」ヒーローとなった超人達は今やそれぞれの人生を凡庸に過ごしていたが、ある時豪胆なコメディアンという元ヒーローの男が抵抗の末殺される。一体誰が超人を殺したのだろうか、活動を禁止されてもマスクを脱ぐことをしなかったロールシャッハという頑固で異質な元ヒーローがその事件の謎を追うストーリーで、夜の街並みとクラシックな雰囲気によってハードボイルドなサスペンスドラマになっているのだけれども、コメディアンという死んだ男が狂言回し的な存在となり、米ソ冷戦時代の核戦争前の緊迫感の中で、暴力とは、平和とは、人間の本質とは、生命の価値とは、と哲学的な問いにまで発展していく。

ザック・スナイダー節大炸裂な過度で頻繁なスローモーションの多用や青みがかった色彩設計、ロールシャッハによる日記の独白と共に描かれるビジュアリズムの洪水など、ポップでロックなサウンドをかけながら独特な世界観を構築していて、まだ荒削りで冗長的ではあるけれども、この至高のビジュアルセンスと演出で描かれる元ヒーローによるヒロイズムの是非というテーマが半端じゃなく最高。
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