カタクチイワシ映画レビュー

野獣死すべしのカタクチイワシ映画レビューのレビュー・感想・評価

野獣死すべし(1980年製作の映画)
3.6
様々な戦場の惨劇を目にした事から徐々に狂い、犯罪に手を染めていく元カメラマンを、松田優作が演じる。

自分もそうなんだけど、あまり松田優作を知らない世代に特にオススメな作品だと思います。

松田優作って何であんなカッコイイんだろう。もちろん背は高いしスタイル抜群だけど、個人的に彼は所謂イケメンとは違うと思うし、少なくともこの映画の中ではシブい役柄という訳でも無い。寧ろ作中では頬をこけさせ、常に俯き加減で歩き、その眼には魂がない。代わりに入ってるのは狂気か無か。でも、カッコイイんだよなぁ。

全編通して松田優作が出てるシーンはその演技・役作りも相まってとても好き。特に好きなのは中盤、伊達(松田優作)が銃を入手し、サイレンサーの防音性をブローカー相手に試すカット。スローモーションが効果的に使われてて最高に良かった。

もう一つは終盤の見せ場。伊達と、彼を執拗に追う刑事・柏木(室田日出男)の列車内のシーン。2人の演技が素晴らしく、とんでもない緊迫感で息を呑んだ。松田の顔と眼が本当にヤバいし、それを受ける室田の演技もあって、凄く怖い。自分なら間違いなく3回チビって4回目でショック死してます(←観たらわかる)。

ただこの映画ラストシーンがちょっと抽象的な為に、結末は人それぞれの解釈に分かれます。公式にも明示されてないとの事なので、そういったハッキリと描かれないラストが嫌いな人にはモヤモヤが残ってしまうかも。

ですがそれでも、稀代の名優・松田優作の脂の乗った演技を観ることの出来る一作に変わりありません。ちょっとオススメです。