プペ

グランド・イリュージョンのプペのレビュー・感想・評価

グランド・イリュージョン(2013年製作の映画)
3.4
ジェシー・アイゼンバーグが、冒頭から「ソーシャル・ネットワーク」よろしく早台詞をまくしたてる。
その時点で自分自身を含め健全な観客は、この映画の″ミスリード″に引っ掛かっていたのかもしれない。

″マジック″を描いた映画になかなか良作はない。
マジックというエンターテイメントは、鑑賞者の目の前で見せるからこそ驚きがあるわけで、映画というそもそもが″つくりもの″の世界の中でいくらびっくり仰天の奇術を見せたとて、驚ける筈がないからだ。

今作においても、主眼を″マジック″に置いている以上、その障壁は免れない。
実際、繰り広げられる数々のイリュージョンに対しても、「まあこれが実際に目の前で行われた凄いだろうね」と一歩引いた立ち位置で観ざるを得なかったことは確かだ。

ただ単に、映画世界の中で壮大なイリュージョンを繰り広げて「凄いでしょ?」という作品であったならば、極めて駄作と言わざるを得なかったろうけれど、この映画の場合は、全編に渡るテンポの良さと、キャスティングの巧さで、そういったマイナス要素をカバーし、映画としての質を高められていると思う。

この映画の中では当然ながら数々のマジックシーンが描かれるが、マジックショーそのものの魅力は、冒頭の4人の路上マジシャンたちの登場シーンに集約されている。
彼らの鮮やかなマジックの手腕をいきなり見せつけられて、観客は「ああ、これからこいつらがとんでもないイリュージョンを見せるのだな」と強く認識させられる。
先に記した主演俳優の早い台詞回しも含めて、この″見せ方″が映画全体に効いている。

もちろん端からマジックの「タネ」もとい、映画の「オチ」を先取りしようと″ステージ″に対して斜めから映画を観たならば、わりとすぐにネタバレしてしまうかもしれない。
ただそういう観方は、マジックを観るにしても、映画を観るにしても、「無粋」というものだ。
勘ぐること自体は結構だと思うけど、娯楽として真っ当に楽しみたいのであれば、きちんと真っ正面から観て、気持ちよく騙されることも大切だと思う。
プペ

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