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タイニー・ファニチャーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

タイニー・ファニチャー(2010年製作の映画)
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ワイドな横長画面で床に寝そべり、壁にもたれる怠惰なローアングル。NYトライベッカも特別な景色ではなく、まるでありふれたどこか。真っ白な棚、広くて趣味の良い部屋を背景にしたアップショットは、横長に間延びした空間が無造作で殺風景でもあり。けど、そこに収まったレナ・ダナムと実の家族、後の『GIRLS』へと繋がるキャストたちの飄飄と淡白な表情は、どの顔もカタログ的に切り取って絵になる。そしてとにかくみんな、よく眠る。
アーティストの母親と出来が良い妹、大学の友達メリット・ウェヴァー、しっかりした3人は同じような黒縁眼鏡がクールでカッコいい。一方、レナ演じるオーラは成虫に脱皮する前の芋虫だ。或いは、二度寝中の寝坊助だ。暇だけはある、いやそもそも文化的に恵まれた環境もある。羨ましいことに、それを浪費する余裕がある。自分勝手で八つ当たりしても、すぐ謝っちゃう。相手を選ぶくせに一人にはなりたくない。そんな覚悟はない。
ジェドとオーラが同じベッドで並んだ構図(トリュフォー映画そっくり)が長年の夫婦みたいだけど、お互い同類だからこそ相手に満足せず無いものねだりする。いつも空腹で眠いけど、開ける戸棚や冷蔵庫には残り物や忘れ物しかない。欲しいものを積極的に求めれば自尊心を失う。何もかも皮肉で不毛。それでも絶望する訳じゃない、生温い温度のベッドが現状を肯定してくれるから。
「詩なんて夢みたいなもの、誰もが書きたがるけど他人のことには興味ない」って、確かにそうだ。この映画だってそう、退屈な他人の夢の話を聞かされるようなものである。それでも語りたい、レナダナムはそのエゴを隠さない。勇気なのか自信なのか特権なのかわからないけども。
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