ヒノモト

アルプスのヒノモトのレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
4.1
『女王陛下のお気に入り』『ロブスター』などのヨルゴス・ランティモス監督による日本未公開作品をJAIHO配信にて鑑賞しました。

良い意味で気持ち悪い映画でした。
ヨルゴス・ランティモス監督作ならではの若干のわかりにくさは残るのですが、明解に映像になっていないからこそ感じるその空気から感じるグループの厳しさと演技と現実のもたらす影響が痛々しく感じて、怖いくらいでした。

物語は、様々な職業から成る「アルプス」という名前の愛する人を亡くした人々のために故人を演じ、共に時間を過ごし、すべての要望を叶えることで喪失感を癒すサービスを提供する謎の集団は、秘密厳守や報告義務など外部に知られてはいけない厳しい掟があり、その中の看護師は故人となったテニスプレイヤーを演じているうちに、現実と演技の境界線が分からなくなるというお話。

この故人を演じるというサービスが、本当に残された遺族のためになっているのかもよく分からないですし、歯車が狂い出す後半部分自体が機密漏洩なのか愛憎によるものなのか断定できないし、そこに暴力表現もあって、演技やサービスの価値基準が定まらないままに終わってしまうので、本質的な意味は分からないままなんですが、成立していたものが不協和音となった時に、精神状態が崩れていく様を表している終盤の描写が、本当に気持ち悪いです。

おそらく想像の余地を残しているということだと思いますが、描かないだけで観る側の気持ちを放り出す作品ではないので、「変な」映画の部類ではあるものの、人間の気持ち悪さは存分に感じられる内容だったと思います。
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