arch

アルプスのarchのレビュー・感想・評価

アルプス(2011年製作の映画)
3.5
誰かにとって「誰か」、のような相対的な関係性によってのみ、個人は存在しうるのではないか。夫や妻、娘、友人、親…そういった属性によって、人は関係性の図式の中で配置される。

では、それは代替可能なのではないか?容姿も振る舞いも一致していなくても、それは取って代われるのではないか?
という問題提議に向き合った作品になっている。
亡くなった人の代わりを務める仕事をしている4人組【アルプス】、その看護師の様子を追っていく本作は多種多様な関係性の中にはめ込まれていく。
そのサービスは現実的に考えて需要があるのか懐疑的であるが故に、それを求める人たちとそれが笑いなく成立する関係性にランティモスの醸成したいシニカルな雰囲気が感じられ
る。
面白いのは、彼らの行動は果たして現実離れしているのか?というところ。
ユングが提唱した人間の外的側面であるペルソナを使い分け、我々は現実で演じ続ける。果たしてこの異様な光景はフィクションなのか。我々もまた、誰かの為の「誰か」になろうと努力しているのではないだろうか。
その事の"気づけなさ"、自分ことにしがたさが際立てば際立つほど、この映画の顛末たるペルソナに依存し、自分を見失う結末は、真実味を帯びる。

ただあのラスト、正直この問題提議、というかそういう人の社会性への興味関心以上のものが無いがゆえの無難な落とし所に思えてならないので、映画としてはそこまで…という感じ。
arch

arch