ハル

ハンナ・アーレントのハルのネタバレレビュー・内容・結末

ハンナ・アーレント(2012年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

書籍『人間の条件』が難しすぎてまずは映画から、と観たのだけどすぐに彼女を好きになった。
自らもユダヤ人でありながら、収容所を経験しながら、なぜこうも静かに物事を見られるのだろう。

みんながアイヒマンで自分の感情を処理しようとする中で、流されることなく屈することなく思考し主張する姿、かっこよすぎる。
それは多くの人が彼女に望んだ「アイヒマンを断罪するユダヤ人哲学者」の姿ではなかったけれど、彼女は誰よりも悪を批判し、惨禍が二度と起きないように考え続けた人だったと思う。
(みんなが彼女みたいに強くはあれないのだろうな...とも思ったり。これはもう少し考えたい)

理解しようとする強さ。でもその強さに隠れて見えにくい苦悩も、少し垣間見えた気がして。彼女をもっと知りたくなった。

ユダヤ人は迫害すべきという「正義」に苦しめられた人々が、ナチスは絶対悪という「正義」を主張し、今も「正義」によって建国されたイスラエルとパレスチナ問題は続いている。正義って幻?ってなりそうな世界で力になってくれる作品だった。


お互いの理解者たる夫婦、本の積まれた書斎、友人たち、大学という学びの場、彼女を慕う教え子たち、タバコと眼鏡...全部素敵だ。
ハル

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