アキラナウェイ

アカシアの通る道のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

アカシアの通る道(2011年製作の映画)
3.6
Simple is good.

尺は87分。

登場人物は3人。

映画は色々と盛り付けて良くなるとも限らない。こうやって削ぎ落としていっても良くなるって事もある。

木材を積んだ長距離トラックの運転手ルベン。赤ん坊を抱いたシングルマザーのハシンタが、彼にブエノスアイレスまで乗せて欲しいと頼む。かくして、ルベンとハシンタと赤ん坊・アナイの3人はパラグアイからブエノスアイレスまで車中を共にする事に—— 。

無口で無愛想なルベン。

ハシンタの名前を尋ねたのは、
開始35分も経った頃…。

極力排除された台詞。

母に電話すると言って、その後涙を流していたハシンタの心情も、同じパラグアイ出身の男と何を話していたのかも、よくわからない。

彼らに何が起きているのか、説明してくれる語り部など存在しない。感受性の感度をMAXにして、カメラ越しに彼らの表情や仕草から何かを汲み取ろうと眺めるだけ。

びっくりする程何も起きない。

でも不思議と飽きないんだな。

アナイの、あくび、クシャミ、眠るタイミング、全てが絶妙。そんな赤ん坊を横目に、ルベンも心を開いていく。

ハシンタをブエノスアイレスに送り届けて、彼らの旅も終わり。ルベンはアナイにある贈り物と、ハシンタに提案を持ち掛ける。

彼らは果たしてどんな関係を紡いでいくのだろうか—— ?

彼らの心の機微に
目を凝らして
耳を澄まして
静かに沁みる。

嗚呼そうか。
こんな作品を観る事で
僕は心のバランスを保っているんだ。