一八

そして光ありきの一八のレビュー・感想・評価

そして光ありき(1989年製作の映画)
4.7
全編アフリカで撮影された、オタールイオセリアーニ監督による寓話的作品。
(『バニシングポイント4K』が観たい)

(用事で名古屋に寄るついでに上映中のミニシアターに行こう)

(時間帯間違えた!)
ということがあり、その代わりに上映してた本作を鑑賞。
鑑賞前は(題名が三浦綾子先生の『道ありき』に似ている)といった感じでどういう作品なのか全く理解できなかったが、ユーモアに溢れる作風にグイグイ引き込まれていった。

森林破壊が進むセネガルの奥地で暮らす原住民族を描いた物語。
本作最大の特徴は、登場人物が話す言語に字幕が一切ついておらず、たまに挿入されるインタータイトルや彼らの素振りで何が起きているのかを理解していくという、一種のサイレント映画に似た作風をしていることだ。
劇中ではその他にも楽器を叩く音で遠くの人とコミュニケーションをとるシーンがあったりと、現地の人でしか伝わらない独自のコミュニティが丁寧に描かれており、何を話しているのかはサッパリ分からないが、状況で大体は理解できるという、異国の地に始めて訪れたあの時と同じ感覚を味わうことができる。
近代的な重機と原始的な超常現象が同時に行き交いするリアルともファンタジーとも言えない不思議な世界観の中で、昼ドラあり、ライオンキングあり、ワニありなゆるい日常を映しながら物語は進んでいく。

※ここから先は少しネタバレ注意

本作は近代文明の侵食による環境破壊とコミュニティの消滅を問題視している一方で、原住民族の怪しげなしきたりに対してもやや懐疑的。
滅びゆく民族が文明に順応するコメディタッチなラストからは"環境や文化が破壊されたとしても人々は生き続ける"といった強いメッセージを感じた。

異質だけど置き去りにしない絶妙な演出が素晴らしい。
この映画に出会えて良かったなと心からそう思える傑作だ。

「この地に永遠に呪いあれ!」
一八

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