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男たちの挽歌 IIの教授のレビュー・感想・評価

男たちの挽歌 II(1987年製作の映画)
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前作は「ハードボイルド・アクション」としての傑作として、色々と作劇上の「粗」は露呈していても、それを凌ぐ映像的熱量と、ストーリーに強引なまでに徹底された「泣き」のドラマ性と、ストーリーに完全憑依している俳優陣のカリスマ性、エモーショナルな音楽演出、キレのあるアクションなどが結実していた。
本作も、前作以上に「力技」でこちらを捩じ伏せてくるほどに熱量は高いのが特徴。
前作同様に、アクション映画としては面白いし、泣けるのだが、一方でストーリーは強引で、且つ展開についてもとても大雑把である。

前半は、元極道のロン(ディーン・セキ)の経営する「造船所」の影で暗躍する「偽札製造」を暴くためにキット(レスリー・チャン)とホー(ティ・ロン)の兄弟の活躍。
前作の相剋を経ての連帯はシリーズとして素直に感動的。
そこからアクロバティックに展開し、廃人同様になってしまうロンと、唐突に登場する前作、マークの双子の弟ケン(チョウ・ユンファ)との物語。
ケンの登場シーンの「掴み」として演出されるゴロツキのアメリカ人との米を巡る人種間の攻防に面白さもありつつ「?」という感情が同居するところが本シリーズの面白さとも言える。
全編がそんな感じで、いわゆるツッコミどころと共存する劇中の人物たちは驚くほど生真面目に演技している姿が好感。
しかし、各シーンで常に不思議なことが起こるので、困惑もする。
少なくとも、ロンとケンが知り合いだったことは作中では正直飲み込みづらい。
それ以上にあの漫画家は誰だかさっぱりわからない。

総じて、ストーリーは「あってないようなもの」だとも言えるのに、キットが絶命するシーンはとても切ないし、顔面蒼白で狼狽しているホーに声をかける新人警官に、キットを重ねてしまうシーンはより切ない。
その死を悼むようなムーディーな楽曲からの、テーマソングへの移行、葬儀からクライマックスの大銃撃シーンへの移行などは、実に映画的ショットで素晴らしい。

クライマックスはサービス満点の拳銃からマシンガン、手榴弾にダイナマイト、日本刀まで飛び出して、後年のハリウッド・アクションに影響を与えまくったビジュアルが満載。
銃弾の嵐に、もはや不死身とも言える主人公たち。
個人的にはホーの出所後の就職先の社長だった「キンさん」に対して若干、態度が横柄になりつつあるホーなども味わい深い。
ショットや編集のカッコ良さの中にも、相当「雑」にも感じるものもたくさん混じっていて「完成度の高い映画」とは言いづらい面が多いけれど、それでも体感としてしっかり感動もできるし、単純に面白いという強度は時代を超えて、普遍的なものだと思うので、前作と比べても、前作以上の雑さを残していても、やっぱり面白い映画だったと思う。
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