くりふ

キャプテン・フィリップスのくりふのレビュー・感想・評価

キャプテン・フィリップス(2013年製作の映画)
4.0
【あめちゃん怒らすとこわいでー】

…という映画だと思った、要するに。でも日本も他人事じゃないし、少しでも海賊への抑止力になるならプロバガンダでもいいや(笑)。

渾身のイラク取材原案をB級アクションに貶めた『グリーン・ゾーン』という前科があるので、この監督の実話原作ものには用心していましたが、本作は巧く乗り切りましたね。面白かったです。

海賊へ対処する緊迫ディテールの積み重ねは断然、フィリップス艦長本人による原案手記の方が強烈です。実際命懸けだし。しかし映画のデフォルメも巧いですね。適切な端折りで、あまり気になりません。

気になったのは、フィリップス艦長の家族切り捨て。冒頭の奥さんちょい見せ描写のみにしたのはどんな意図? 確かに、現場に絞って緊迫高めた利点も大きいけれど、艦長が家族のために闘う面も大きいわけで。また、事件を知った家族の動向もこの事件の一方の大きな柱なわけで。

原案での、奥さんの絶望が女性捜査員の電話で救われる話なんてよかったし、もっと家族を出してよかったんじゃないかな?

海賊の扱いは「戦時下の子供だから仕方なしモード」採用で、若い海賊たちへの理解を見せてるようなないようなグレーな感じがまあ巧いと思った(笑)。実際はもっと話が通じない連中じゃないですかね。無政府の国で育った彼らには、強奪行為は当たり前の日常じゃなかろうか。

逆に、話ができる相手としたことでドラマが生じているんですね。ジャック後に賊長ムセが「今からオレがキャプテンだ!」と宣言したことが、ずっと彼を呪縛する辺りとか。彼がちゃんと「キャプテンの責務」を全うしようすることが、かえって首を絞めることになる。この辺り、なかなか巧いと思った。

画的ないちばんは、米国の駆逐艦ベインブリッジと脱出艇「絆」の図、でした。人質を取った海賊がイニシアチブを握っているはずなのに、彼らの方がまるで、西部劇のリンチなどで馬に引き摺られる被害者のように見えてしまうんですよ。画的アイロニー、強烈でした。

あとちょっとしたことですが、ベインブリッジ艦長に血が通っているのがよかった。彼の段階で事件が解決できねばSEALs投入で、そうなれば「処理」しかない。艦長さん、ここで動揺や痛みをひょっと見せるんですね。少なくとも私にはそう映りました。

マシーンであるSEALsとの対比、そして「あめちゃん怒らすとこわいでー」を客観的によく知る人物として描かれたのだと思います。

トムはんは相変わらず安定感ありますね。でも脱出艇最後の大芝居はやり過ぎだと苦笑しました。泣くというより熱唱なんだもん(笑)。本人がやりたかったのか、最後に華を持たせようとしたものか。でもまあ、スターなんだからあれくらい許してあげますね(←上から目線してみる)。

他にもいろいろ感想あったのですが、みてから時間経っちゃたんでたぶん忘れました(笑)。このへんで、終わります。

<2014.3.3記>
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