本作は和製『ライフイズビューティフル』とでも言えるような、戦争✖️コメディアン✖️家族愛という三拍子の作品だが、個人的には『ライフイズ〜』より、本作のほうが沁みる。やっぱり日本が舞台だからかな。
私は、役者としての明石家さんまが、結構好きである。
笑いのノリも好きだが、何と言っても「深刻な」表情が好きだ。普段フザけて笑ってばかりの人が、不意に見せる深刻な表情は、そのギャップに迫りくる真実味がある。
ギャップといえば、本作は映像と音声のギャップが良い。
例えば、序盤、音声で「友だちができました」という内容の坂口憲二の手紙を読みつつ、映像ではその友だちが殺されていくシーンが映る。
極め付けは、阿鼻叫喚の地獄絵図のシーンで流れる森山良子の「さとうきび畑の唄」。
こんなにも不条理な殺し合いに、
こんなにも綺麗な歌声を被せることで、
もう心はグラグラに揺すぶられる。
殺し合いをしているのに、
“風が通りぬけるだけ”だってさ。
なんというギャップだろう。
戦争中だって、
地球ではただ、風が通りぬけるだけなんだなぁ。
“人間の営み”と“自然の営み”のあいだの
あまりに大きなギャップにやられる。
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「同じ人間ですよ、きっと」
明石家さんまは言った。
私も、きっと、そうだと信じたい。
今はアメリカとは仲良くなったけど、仲良くなれない国もある。
でも、きっと、同じ人間だよね。
そう信じたい。
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「😁😊せーの、しあわせ!😀😃😄」
と言って結婚式の家族写真を撮ったあの日、
沖縄に陸軍がやってきた。
戦争がやってきた。
本作はただ、それだけの話。
「普通の幸せ」の消失の物語。
夏の日差しの中に消えていった、
ささやかな家族の物語。