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ラストエンペラーのtomひでのレビュー・感想・評価

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.0
新宿歌舞伎町に新しく出来た、坂本龍一音響監修で全席プレミアムシートという映画館で『ラストエンペラー4Kレストア版』が上映されているので行ってみた。坂本龍一音響監修の映画館で、坂本龍一が音楽担当した映画を観るのはとても贅沢な感じがする。

中国が舞台なのに全編英語という違和感はあるが(笑)ベルトルッチ作品にしてはとてもストレートで分かりやすく、日本と中国の歴史観が潜在的にある日本人には観やすい作品だと思う。『ラストエンペラー』を観るのは今回で3回目。好きな映画だが初見時が一番深く感動できたなとも思っている。

=======以下ネタバレあり======

オープニングの溥儀の手首切りの自殺シーンから一気に引き込まれる。モノトーンに近い画に浮かび上がる溥儀の血の赤、強烈なコントラスト。溥儀の自殺はこの映画の創作らしいが、このシーンがあるのとないのとでは映画の入り方が全く変わってくる。巧い構成。

映画は現在シーンと過去シーンのカットバックで展開される。現在シーンはモノトーンに近い色を抑えた画で、過去シーンは黄色(皇帝の色)を基調とした画で構成されている。カメラはビットリオストラーロ。今までこの人の画にどれだけ感動させられて来たか分からないが、この作品でも紫禁城を背景にとても印象的な画を見せてくれている。現存Blu-rayディスクのレストアと比べてみると分かるが、今回のこの4Kレストアで画は更に綺麗になっている。

政権が入れ替わる事で180度変化していく中国という国、そこで生きる人々と皇帝から囚人までを経験する人間、溥儀の姿に引き込まれる。歴史に翻弄されるこんな人生が現実にあり得る驚き…。

ラストのコオロギからの観光客シーン、めちゃくゃいい。映画を一気に現在に戻しながら歴史の流れを深く印象付ける巧い演出。そこに流れる坂本龍一の音楽も良すぎる。深い余韻に浸れる映画。
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