むさじー

ラストエンペラーのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

ラストエンペラー(1987年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<歴史に翻弄された男の人生を描いた愛憎のドラマ>

激動の歴史の荒波にもまれて、崇められ、後に虐げられ、最後は一市民となった愛新覚羅溥儀(ジョン・ローン)の運命に翻弄された人生が、歴史的流れとともに描かれる。
一大叙事詩であり、満州国の歴史を知る物語としても興味深く、その歴史の進行と過去の回想の巧みな展開に引き込まれる。
皇帝としての溥儀の若き日々と、収容所で「告白」を迫られる溥儀が交互に、時系列で描かれるので混乱することなく、よどみのないドラマになっている。
そして圧巻は故宮を借り切っての壮大なロケで、そのスケール感と映像美に圧倒される。
今ならCGタップリのはずだが、全て本物というのが凄い。
ラストシーンの「コオロギ」にも驚かされる。
冒頭の溥儀が3歳で即位するシーンで、幼い溥儀の気を紛らわすために与えられた筒の中の生きたコオロギが伏線だが、もちろん、コオロギが60年以上も生きる訳はないので、面白い比喩に思えた。永い間閉じ込められたコオロギと同様に、溥儀も紫禁城に始まり収容所までその半生を幽閉されたまま過ごし、今、やっと解放されて自由の身となった。
そして溥儀の姿は消え、帰らぬ人となった……といったところか。
史実に基づいてはいるが、それに忠実な歴史ドラマという訳ではなく、人物の個性を際立たせた愛憎の人間ドラマとして秀逸である。
むさじー

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