くりふ

アメリカン・ハッスルのくりふのレビュー・感想・評価

アメリカン・ハッスル(2013年製作の映画)
4.0
【アメリカのたわごと】

期待薄でしたが…なんだ、面白いじゃん!同監督前作『プレイブック』の延長として楽しみましたが、あちらより巧いと思った。

相変わらず自己愛爆裂な連中が、自己愛衝突させてコミュケーションしてゆく。他人を受け入れるのが下手だから、その不安感からコン・ゲームが生まれる…と受け取れる構造になっていて、スティングの面白さが先ではないんですね。

で、全体を覆う愛すべき安っぽさがいい! 元々タイトルは『アメリカン・ブルシット(bullshit/たわごと、でたらめの意)』だったものが、shitが放送禁止用語に当たるため使えなくなり泣く泣く変えた…という経緯があるそうですね。惜しい。すごく相応しかったのに。

物語の芯は詐欺師カップル、すだれ髪アーヴィンとノーブラ・シドニーの愛の行方ですが、回転寿司の如くお安く廻る忘れ物衣装の中で愛を確かめ合う冒頭シーンが見事な象徴化でした。この円環は、愛が変質する終盤でも対置されます。泣けます(笑)。

このカップルは、バカバカしくてみっともないのに惹かれますね。そのさじ加減で引っ張る引っ張る。

役者の魅力を引き出すのが巧い、というのは今回も納得。監督が自己愛過剰になるほど各人物を個としてじっくり見つめているから役者はノっちゃうんじゃないかな。また今回は皆、普段のイメージを裏切る役ばかり演じていることも刺激になったのでは。

クリスチャン・ベールの悲惨な頭部はイケメンがそれやってもわざとらしいなあ…とも思ったけれど、最後の一刺し(スティング)でのキメ顔は、やっぱり彼ならではの説得力がありました。さすがバットマン(笑)。

一番の収穫は、見事、暴走お色気オバハンに化けたジェニファー・ローレンスのお下品キュートと、見事、仮面愛人に化けたエイミー・アダムスのまさかの怪しさ。お二人ともあからさまな胸の谷間が眼にむふふでしたが、エイミーのそれは、ユルくて明確に罠だとわかるところが面白かった。

でも一番の視覚ショックは、当時のコスモポリタン編集部、壁にデカデカと貼られたバート・レイノルズの毛もじゃヌード写真でしたが!(笑)

そうそう、当時はこういう感覚だったんでしょうね…。今の職場でこれじゃ、男にもセクハラでしょう。実際、仕事やる気なくすよな(笑)。

そんなこんなで、普遍的な魅力がしっかりあるから、アメリカ固有のことがわからずとも楽しめると思いました。英国訛りがヒントになったりもするけど後で解説入るし。

もちろん、例えば副音声解説とも言える使用楽曲の知識などあれば、より楽しいですが。私が好きなのは迷宮入りの瞬間で絶妙にかかるホワイト・ラビットと、お色気ジェニファー熱唱死ぬのは奴らだクリーニング!(爆笑)

…振り返ると、面白ポイントたくさんありましたねえ…このへんで終わりますが。

(当時)今年のアカデミー賞では、本作と『ウルフ・オブ・ウォールストリート』が安さ爆発人ドラマとして似たもの勝負になった感がありましたが、ただ直球のあちらに比べたらずっと、こちらの方が堀り甲斐あると思います。

<2014.3.31記>
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