小波norisuke

ぼくたちの家族の小波norisukeのレビュー・感想・評価

ぼくたちの家族(2013年製作の映画)
4.4
あまりに突然の母の余命宣告をきっかけに、これまで目を背けてきた、想像以上に厳しい現実を突きつけられる若菜家の男たち。

うろたえるばかりの父。自分を責める気持ちと、家族を責めたい気持ちを爆発させてしまいそうな長男。そんな兄にしかられながらも、兄のことを心配する実は心細やかな次男。

心が折れてしまいそうな状況でも、何とか踏ん張って、悪あがきすることを決意する男たちの姿に、情けないまでに慟哭してしまった。

こういう時こそ笑うのよ、といつも笑顔を絶やさなかった母。脳の病に冒されても、しきりに大切に世話してきたサボテンの名前を思い出そうとする。これまで母が口にすることのなかった家族への本音が、ふいにこぼれ落ちる。しかし、いろいろな思いを胸に抱えながらも、母が家族に心からの愛情を注いできたことをサボテンが教えてくれる。若菜家の一人一人がとても愛おしく感じてしまった。

原作を大切にしつつ、辛い現実の中にも潜む可笑しみや一人一人の繊細な心の動きを愛情込めて暖かい映像に仕上げてしまう、石井裕也監督は、今後の作品がますます楽しみだ。
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