小波norisuke

her/世界でひとつの彼女の小波norisukeのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
4.5
近未来を生きるセオドアの仕事は、他人の手紙をコンピュータで代筆すること。プライベートでは愛する妻と離婚協議中で、「もう一生分の感情を全部使い切ってしまったような気がする」と、空虚な心を抱えている。しかし、セオドアが書く手紙は、とても情感にあふれていて、読み手の心を揺さぶらずにはいられない。そんなセオドアが、人工知能の「彼女(her)」と恋に落ちる。

セオドアの心の動きが細やかに描写されていて、とても切ない。永遠だと思っていた恋を失う胸を裂くような痛み、その痛みを理解して寄り添ってくれる「彼女」に感じるやすらぎやときめき。

セオドアと「彼女」の恋を応援する、友人のエイミーの言葉もまた心に染みる。「恋に落ちたら、誰もが狂気になるわ。社会的に受容された狂気ね」。「私たちが生きている時間は限られているの。だから謳歌しなくちゃ。喜びを!」

たとえ「彼女」がコンピュータのOSであり、リアルな肉体を有していなくても、セオドアの恋は生々しくリアルである。

人は恋をすることで心が満たされ、日々が色彩を放つ。しかし、愛し合う者同士でも、時には傷つけ合い、相手を責め、自分を責める。そして、恋を失うと激しく消耗してしまう。それでも大丈夫だと思える。だって、たとえ1秒ごとに外なる肉体は衰えようとも、そして、たとえ人工知能が進化する速度に追いつけなくても、人間だって、1秒ごとに進化しているはずだと信じられるから。どんなに恋の終わりが辛くても、きっと進化の糧とすることができるだろう。

スカヨハ(あるいはスカジョ)の歌声がとてもセクシー。
小波norisuke

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