Kana

her/世界でひとつの彼女のKanaのレビュー・感想・評価

her/世界でひとつの彼女(2013年製作の映画)
3.0
AIに恋をすることで、人工知能とは何か、人間の感情とは何か、恋のその先を一心に見つめるラブストーリー。

心が幼いわけじゃなく、頭がおかしくなったわけでもなく、ただ純粋にAIに心を開き、愛しさを感じてしまった主人公が微笑ましい。
ほんのりピンク味がかった映像が、キラキラで甘い砂糖菓子みたいな恋愛模様を映していて切なくなる。
職場のシーンで社名や同僚との会話でさりげなく時代設定を伝える様子や、のちのちの展開を予想させる最初の電話のシーンなど、ちょっとしたテクニックに感心しました。
なんて言えばいいのか…見る小説みたいな、物語の紡ぎ方に美しさと丁寧さがありました。
ルビースパークスを思い出しました。

SiriやAlexaが当たり前の現代から考えれば、彼女のようなAIが生まれる日も決して夢ではないと思う。
会話のセンスはもちろん、声の抑揚、息継ぎから微妙な間まで、主人の求める可憐さと聡明さを合せ持つAI…私も欲しい…。
ちょっとした発見や誰かの愚痴、くだらない閃きや小さな悩みを…誰かに聞いて欲しい、受け入れて欲しい、背中を押して欲しいと思うのは私だけじゃないはず。
AIがそれを叶えてくれるとしたら、苦労して人とわかりあう必要はあるのか?
映画を見ていて、人間の価値は一体なんなのだろうと考えていました。

だけどやっぱり、AIとのコミュニケーションだけじゃ悲しいかなぁと、私は思います。
人間は完璧じゃないし、他人の思い通りにはならなくて、自分を受け入れてくれるとも限らない。
拒絶されて傷つくこともたくさんある。
でもだからこそやっぱり、親や家族だけでなく、自分以外の他人に理解して欲しいと願ってしまうのが人間なのかなと。
AIの秘書や執事がいたらそれはそれで欲しいけど。

2人の恋の障害が、とても純粋で複雑なところに回帰するのが美しくて、終わり方も好きでした。
恋するホアキンフェニックスは胸のときめきを全身で表していて、すっかり別人みたい。
感情表現豊かすぎて目が離せなくなります!
Kana

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