Kana

真実のKanaのレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
2.0
母親でいることよりも女優であることを選んだ、母と娘。
2人の関係を通して、″人生における真実とは何か?″を描いた物語。

予告編では、もっと殺伐とした空気になるのかと思っていたけれど、フランス映画らしく穏やかで、感情を叙述的に描く、綺麗な映画だった。
カトリーヌドヌーブの、老いても変わらぬプライドと、プライドで隠しきれぬ老いの、バランスみたいなのがとても人間らしかった。

常々思うのだけど、母と娘というのは、本当に特殊な関係。
ただ同性の親子というだけではなく、母親が子育てをするのが普通とかいうことでもなく…。
差別ではないけれど、やっぱり男性より女性の方が感情豊かで、愛も嫉妬も優しさも孤独も憎しみも強いことが多いと思う。
そんな母親は、自分の子供を自分の内臓で育てて、死にそうになりながらこの世に生み出す。
母親が、娘を自分に重ねて見ることは、かなりオーソドックスなことなのではないだろうか?
まるで分身のように。
2度目の人生を生きるように。

同じテーマの作品として、戸田恵梨香の母性を思い出したけれど、あれはもっとファンタジーミステリーのような作りで、情緒は1ミリもない完全なフィクションだった。
重なって見えたのは、母と娘の関係が、娘とその娘の関係や、娘と旦那の関係など、直接的な2人の対峙ではなく、周りの人間とのコミュニケーションの対比で示されているということ。
描き方は比べものにならないけれど、そのアプローチは正しいように思う。
近過ぎると、見えなくなるから。
何かを介して見た方が、客観性が出るのかなと。

ただ、感想を書きながら思ったのは、母と娘というテーマはそれすらも、この作品の一つの描き方であって、映画の題名が″真実″であるというのが、1番重要なこと。
大女優である母は、母である前に女優で、孤独に押し潰されず戦い続けた人だった。
娘にも、姉妹にも、夫にも弱音を晒すことなく、自分の描く″自分″を″真実″として生きた人だった。
だからと言っていい母親ではなかったことは変わらないけど、母の演じる姿を見て、彼女にとっての″真実の形″を感じ取った娘が、それを受け入れられるようになったシーンはとても温かかった。

是枝監督すごい、でもそれを忘れて見た方が楽しめたから、劇場で話題になってる時に見なくて良かった。
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