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7BOX [セブンボックス]のnoteのネタバレレビュー・内容・結末

7BOX [セブンボックス](2012年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

パラグアイのとある市場。携帯電話が欲しいビクトルは、ある日、通りがかった肉屋の店主に声をかけられ、荷物を運んで欲しいと100ドルの報酬で依頼される。荷物は中身の分からない7つの箱。ビクトルは大金欲しさから仕事を引き受けたが、商売敵の運び屋やギャング、警察までもが箱を横取りしようとビクトルを追いかけてくる。

果たして彼は無事に逃げ延び、箱を届けることができるのか?そして箱の中身の秘密とは?
パラグアイ産の映画とは珍しいと思い鑑賞。
海外の映画祭で多数受賞を果たしたというのも納得のアクションスリラーの秀作である。
複雑に絡み合う登場人物と随所に散りばめられた伏線が回収される脚本が見事だ。
まるで初期のガイ・リッチー監督の映画のようだと言えば、内容は想像がつくだろう。

まず、舞台となるパラグアイのスラム街が生々しい。
セットのような飾り気など全くなく、現地で生活する貧しい人々の暮らしぶりが伝わってくる。
まるで我が国の戦後の闇市のような空気感。
悪臭がしてきそうなその映像だけでも見る価値はある。

7つの箱の中身は中盤でバラバラになった女性の死体だと分かるのだが、ギャングと結託している肉屋が金を分ける暗号を間違えて、女を「分けた」というのが真相。

病気の赤ん坊を見ても薬を売ってくれない薬剤師や、出産間近の妊婦をこき使うレストランの韓国人オーナーといい、劇中ではとても人命が軽く扱われている。
「人命より金が重い」世界が、この21世紀にまだ残っていることが衝撃的である。
格差が当たり前の社会だ。

市場で荷物運びを営む少年ビクトルがライバルの運び屋に追われる手押し車での「カーチェイス」を軸に、一見何の関係も無い韓国料理屋のパート女性であるビクトルの姉が次第に事件の真相を知り、弟を助けるべく警察官と共に夜の市場を駆け巡る。

スケベだが酒も賄賂も受け取らない警察官、ビクトルを助けようとするツンデレなガールフレンド、ビクトルの姉を助ける韓国人男性など、生き馬の眼を抜くスラムにも人情が溢れるキャラクターが大勢出ているのが良い。

スピーディな展開は、最後まで飽きさせずに「どういうオチをつけるのか?」と興味を引っ張る。
ラストはテレビに出ることが夢だったビクトルが最後に事件の目撃者映像として思ってもみなかった形でテレビに映るのが痛快。
雑っぽく見えて実に丁寧な脚本だ。
エンドロールには市場でエキストラとして出演した住民たちの名前が延々と流れ、地元愛と映画愛に溢れている。
欧米から見ると自主映画の域を出ていない小品なのだろうが、下手なビッグバジェットの映画より余程面白い。
映画は脚本が命であることを思い知らされる作品の一つである。
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