ろく

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌のろくのレビュー・感想・評価

4.2
音楽をしている奴は総じて屑だ(偏見)。

でもね、屑だからこそ素敵なの。だって屑は「大上段」で語らないから。音楽で大上段に語ってはダメなのよ。なによ、平和、なによ、愛。音楽はそんなの語らなくてもいいんだよ。それより今が「楽しい」ならそれでいい。だから音楽なんだ。

だからミュージシャンをアーティストと呼ぶのは大嫌い。彼らはミュージシャンなんだ。音楽「しか」出来ないの。そしてだからこそ愛しいんだよ。

猫が好きなやつは屑だ(さらに偏見)。

だってそうじゃない。猫なんかこれっぽちも相手に阿ることをしない。いつでも勝手気儘に生きているやつを可愛いなんて言うやつは屑でしかない。猫も屑だし飼うやつも屑だ。

でもね、「屑」だから素敵なの。だって屑は他人に「期待」しないから。「正しい」という言葉のもと「他人」を削ってでも生きていくことをしない。いつでも死ぬよ。だれにも見られず。それが猫のブルースだ。



というわけでこの映画が嫌いなわけないじゃないですか。音楽?ええ好きですよ。モンクもミンガスもローランド・カークも。ついでに山下洋輔も坂田明も大好きです。みんな屑ですよ。自分のことしか考えない屑。だから当然愛おしい。この映画の音楽シーンなんか最高ですよ。もうそれだけでこの映画はいいやって思っちゃう。猫?大好きですよ。一人で猫カフェ行ってしまうくらいに。町で猫見かけたらいつまでも追っていくくらいに。だからこの映画はやっぱり最高ですよ。だって猫がいるだけでいいんだから。

全ての音楽好きで全ての猫好きで、ついでに映画好きな奴なんか屑に決まっているんですよ。でもね、屑は自分のこと「屑」って知ってますから。そしてそのことに少しの含羞がありますから。屑でないとわからないこともあるって話です。

※退屈だという意見もあるけど、この映画は退屈を楽しむものなんじゃないかなと見ていて思った。この映画を見ながらカッテージ・チーズとハイボールを飲み、煙草をふかす。それだけで幸せなのかもしれない。

※fuckとass holeがやたら出てくるだけでウキウキしてしまうのは僕だけではないはずだ。特にキャリー・マリガンの「ass hole」は絶品である。
ろく

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