道人

47RONINの道人のネタバレレビュー・内容・結末

47RONIN(2013年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

【2013.12.06 劇場鑑賞(字幕)】

 予告編やヴィジュアルを見て、「間違った日本」を全力で楽しめるタイプの作品なのかな、どう見ても玉梓ポジションの菊地凛子さんを見て、深作版『里見八犬伝』のような血湧き肉踊る伝奇活劇かと勝手に期待していたんですが、ちょっと予想と違いましたね。
 …まぁ、勝手に期待していただけなので…。『忠臣蔵』という原典にかなり敬意を払おうとしてくれているのは伝わってきます。が、真面目に描こうとすればするほど、「あり得ない日本」が眼についてしまうチグハグ感。もっとはっちゃけた作りであれば。楽しめる要素なんですけどね。
 というか、あのポスターに思わせぶりに登場する全身鎧男や全身髑髏刺青男を目にして「おお、こいつらをどう忠臣蔵に絡めるんだ!?」と思ったワクワク感を返してほしい…特に後者。勝手に吉良側の最強の敵、清水一学的ポジションかと思って盛り上がっていたのに(笑)。

 真田広之さんも格好いいんですけどね…スピーディーなカット割で見せる剣戟も大好物なんだけど、もっとじっくり真田さんの殺陣が見たい。真田さんは外連味と重厚さを両立できる剣戟アクションスターでもあるので、日本的な殺陣をハリウッド大作に入れ込んでも却って映えると思うんだけどなぁ。
 『ウルヴァリン: SAMURAI』でも思ったんですが、真田さんの使い方がもったいない気もする。それこそ深作版『魔界転生』の千葉vs若山のような、溜めと激しさが両立する剣戟が見たい。全身鎧巨人の剛力の一太刀を、磨き抜いた剣技で受け流し、一刀両断するソードマスター・大石とか…。

 まぁ、色々愚痴ばかり書いてしまいましたが、勝手に期待していた要素が薄かっただけなので…。毛の描写とか面白いよね。浅野忠信さんの胸毛とか(最初、あの毒蜘蛛は胸毛から作ったのかと思った・笑)、菊地さんの『ゲゲゲの鬼太郎』の二口女を思わせる髪の動きとか。
 
 サブキャラクターでは豊満な白い肉体を惜しみなくさらしてくれる水浴びシーンなども印象的な芭蕉(米本学仁さん)が良かったですね。いい奴。天狗ソード入手の条では、劇中唯一クスッとできる、ホッとできるいいシーンでした。
 
 あと良かったシーンは、血判状のシーンかな。「カイ」という名に込めたであろう意味を知るシーン。漢字って素敵。あと、りく役の國元なつきさんがとても綺麗。りくの他、「間」や「堀部」など、『忠臣蔵』を知っていると「おっ」と思う名も少し出てきます。
 惜しいシーンはミズキとの最終決戦。『パシフィック・リム』の格好いいアクションを観た後だと、人型のまま戦ってほしかったな、菊地さん。つか墓地のシーン見ると、人型の方が強くないか?(笑) …最期、「女」の姿で息絶えるのは監督の優しさかな?「分かってるな…!」という感じでした。

 あとはカイという「異人」を忠臣蔵に絡めるのに「天狗」を持ってきたのは上手いな、と思いました。天狗に剣 (殺人術)を学んだ故の強さ…というのも非常に燃えますね。天狗の顔の造型は私の好みではなかったんですけど、瞬身の術っぽい衣の描写は非常に格好よかったです。
 天狗を、「信仰を外れ、または傲慢故に魔道に堕ちた者」としてではなく、「自らの信ずる道を選んで、あえて“異端”の道を行く者」としていたのも良かった。朽ちた仏像の前に伏して瞑想するビジュアルなど、天狗関連のシーンは好き。
道人

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