ジャン黒糖

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのジャン黒糖のレビュー・感想・評価

4.6
最新作vol.3に向けて改めて一気見!!
1作目は、おそらく2010年代の映画でも一番見返したし、最強MIXは一番聞き込んだサントラだった!
vol.3まで見続けたけれど、本当ガーディアンズが好きな10年で良かった!

【物語】
遠い宇宙のどこか、地球生まれの孤独な懸賞金稼ぎのピーターは依頼人からの報酬目的でオーブと呼ばれる物質を手に入れる。
実はこのオーブには、惑星を一瞬で消滅させるほどの力が秘められ、クリー人のロナンはこのオーブを手に入れ、サノスに渡す代わりに、長らく対立関係にあったザンダー星を滅ぼしてもらおうと目論んでいた。
一方、ロナンがオーブの力を手に入れることで裏切る事態を危惧したサノスは、謀反を阻止すべく自身の娘ガモーラをピーターのもとに行かせ、さらにはピーターの懸賞金に目を付けたロケット、グルートらもピーターの前に現れ…。


【感想】
10ccの「I'm Not In Love」に始まるピーターの幼少期が描かれる冒頭から一瞬にして心掴まれ、そして舞台は宇宙に変わり、ピーター・クイルがヘッドホンを付けてソニーのウォークマンを再生させて流れるレッドボーンの「Come and Get Your Love」。
からのタイトル『Guardians of the Galaxy』ドーン!!!!へーエイ!へーエイ!最高!!(語彙力)

70〜80'sポップスとスペースオペラの組み合わせはいまとなってはデヴィット・エアー版『スーサイド・スクワッド』はじめ様々なSF作品で取り入れられ、MCUにおいても『ソー:バトルロイヤル』以降のソー作品に間違いなく多大な影響を与えた。
けれど、本作はそれらフォロワー作品より単にアイデアを先取っただけでなく、物語に一定の"エモい"要素を足していて、このシリーズでしか味わえない気持ちにさせてくれている。
それこそがこのシリーズ最大の発明にして最高の魅力でもある。

ピーターのお母さんはもうこの世にはいない。
幼くして1人宇宙に連れ去られてしまったピーターにとって、音楽は亡くなった家族との繋がりを感じさせる唯一のアイテムであり、故郷である地球との距離の遠さ≒宇宙の広大さをも感じさせ、やがて出会う仲間たちをひとつに繋げてくれる。
劇中流れる曲は、そんなピーターをはじめガーディアンズたちの心境をも見事反映していて、ガン監督のセンスまじなんなの?!笑

前半ザンダー星でオーブを巡ってピーター、ガモーラ、ロケット、グルートが初めて出会う場面の、本気で互いに奪い攻撃し合っているハズなのにどこか息の合った連携、動きも感じさせ、ワクワクするし、そこから舞台は宇宙にあるキルン刑務所に変わり、ウガチャカこと、ブルー・スウェードの「Hooked on a Feeling」が流れる。
この流れのワクワク感よ。

遠くの銀河で起きている、彼らの出会いにワクワクが止まらない。
そんな気持ちをも映し出してしまうかのようなストレートで甘酸っぱい歌詞、ピッタリだ!最高だ!!


そしてここで出会うのがドラックス。
話の伝わらない男、というキャラが見た目まんまの強そうな出立ちと比してギャップに笑ってしまう。

そこからの脱獄劇。
出自も性格も目的もまるでバラバラな5人なのに、揃うと厄介で強力。
もうダメか?と思わせておいて一発逆転の脱獄をキメるカッコ良さ、くぅー!!
ここで流れるはルパート・ホルムズのタイトルまんま「Escape」笑
なんで壮大な宇宙とこんなにもこの曲調が合うの?!


物語は中盤から徐々にロナンとのシリアスな戦いに向かっていく。
ただ、そんなときにも、エルヴィン・ビショップの「愛に狂って」でピーターとガモーラが心通わせる(かのように見えた)ひとときが描かれ、背景の宇宙の美しさも相まって宇宙規模のロマンスに心動かされる。


そして個人的には何回観てもグッと来てしまうのがラスト。
かつて幼い頃、お母さんの死に際、その手を握るコトが出来なかったピーターが、ようやく出会った仲間たちと手を握りロナンとの戦いに勝利した末に、ずっと開けられないでいた母からのプレゼントを開ける場面。

そのプレゼントの中身も涙モノだし、このシーンで流れるマーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの「Ain't No Mountain」。
ガーディアンズそのものを指している曲にも聞こえ、セリフはないまま歌詞が彼らの姿と共に流れるこの場面は、各登場人物たちにおける仲間、家族のあり方が映し出され、なぜだか目頭がアツくなってしまう。
ピーターは本当に良い仲間に出会ったんだな。



ということで、ここからは各キャラの話。


彼ら主要人物のバックボーンには、いずれも"家族"からの愛情に欠落がある。

たとえばピーターは、幼いときに母を亡くし、その直後にはおじいちゃんを残したままラヴェジャーズによって突然宇宙へ連れ去られてしまう。
そこからの彼は、ずっと家族以外の大人たちに囲まれて生きてきた。
彼を演じたピーター・クイルはこの作品で一気にスターダムにのし上がったけど、やはり本作のプレイボーイで三枚目な役柄が最高。

ガモーラは幼いころに肉親をサノスに殺され、彼の力に屈し、大人になったいまも彼の娘として、暗殺者として生きてきた。

ドラックスはそんなサノスの率いるロナンに最愛の妻と娘を殺された過去を持つ。

ロケットもまた、改造されたことでいまの醜い姿になったという。
彼は多くは語らないが、背中の手術痕から過去にあった痛みを感じさせる。
みんなのために犠牲になったグルートを想うときの彼の背中の切なさよ…。
彼の声を演じるはブラッドリー・クーパー。
先日インスタで1作目のアフレコ姿を観たけど、マジですげぇな…

グルートは…何度聞いても感動するセリフ「私はグルート」しか言わない。笑


また、ガモーラの妹ネビュラも、本作では姉の裏切りを止めるよう本気で殺しにかかるキレキャラだけれど、その後のシリーズを通じてツンデレキャラのイメージが確立され、いまとなっては本作のツンしかない部分もかわいい。
ロナンにブチキレながらもキビキビ動くネビュラ最高。笑
彼女だって、姉の背中を見ながらも、自身はサノスによって身体を改造され、そのことを憎みつつ、でも人一倍サノスに対する承認欲求が強い。この強気な感じが切ないんだよなぁ。。


そんな、家族との愛情に欠けた"負け犬"の彼らが出会い、共闘するなかで"家族的な"結束力が生まれ、ついには強敵ロナンに立ち向かっていく姿が感動的。
これまでの人生で多くを失ったけれど、これ以上逃げ出さないための、自分にとってこれは人生のチャンスなんだ、と彼らに語るピーターの言葉は胸アツ。



懐かしさを感じさせるポップミュージックと、各キャラのカッコ良さ・哀愁のミックスされた魅力、それをビジュアル的に彩る、ザンダー星をはじめとするポップな色彩、シリアスな戦いのなかで底抜けにシンプルで明るいギャグ、そして普遍的なメッセージ、とやっぱり最高です。
傑作。
ジャン黒糖

ジャン黒糖