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ほとりの朔子のkaomatsuのレビュー・感想・評価

ほとりの朔子(2013年製作の映画)
4.0
18歳の女の子・朔子の、避暑地でのひと夏の、何ということはない出来事。朔子を取り巻く男女の、いわゆる“大人の事情”が、取り留めのない会話を通して、とてもリアルかつユーモラスに描かれている。この映画の面白さは、ぼそぼそとした、無造作で不毛な日常会話の応酬。そんなやりとりの中に、スリリングな男女の機微が盛り込まれていて、最後まで飽きさせない。ヒロインの朔子は、どうしようもなくKYで、優柔不断で、ダメダメな男たちに対して、否定も反目も落胆もせず、ありのままを見守るという、若くも器の大きい女性。二階堂ふみさんが、抑制の効いた演技で、クセのある脇役たちの個性を見事に際立たせていて、秀逸。また、福島原発の疎開者となった青年・孝史の、不遇ながらも実直に生きようとする姿に好感が持てる。孝史を演じた太賀さんの、演技うんぬんを超えたナチュラルな突き抜け感がたまらなく良い。あと、辰子を演じ、この作品のプロデュースも手掛ける杉野希妃さんの、予想不可能な大胆不敵な存在感には、ある種の不気味さを感じた。1980年生まれの深田晃司監督、よくもまあ、これだけのクセ者たちをまとめ上げ、トリュフォーやロメールよろしく、滋味豊かなプロットを創り出したものだ。
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