Violet

アデル、ブルーは熱い色のVioletのネタバレレビュー・内容・結末

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

美しく儚く切ない恋愛映画。
LGBTが題材になってはいるものの、描かれているのは同性愛者も異性愛者も変わらない愛の形。
2人が惹かれあう姿も、相手のことをもっと知りたいと思う姿も、イチャイチャするところも、別れの原因となる価値観の違いや生活のすれ違い、そして浮気も、何もかも異性愛者の恋愛と変わらなかった。

「愛は性別の垣根を超える。幸せならそれでいい。」
という言葉が劇中にあったけど、まさにそうなんだと思う。その人が男だから、女だから、恋をしてるんじゃない。その人だから恋をしてるんだ。

バックグラウンドの違いから、アデルとエマがどんどんすれ違っていくシーンが切ない。
お互いの両親も、アデルの家族は安定を求め、同性愛には反対、そしてエマをもてなす夕食には手のかからないボロネーゼを出した。
対するエマの家族は性に対する考えも柔軟で、やりたいことを仕事にすることを幸せと考えるような芸術家気質、そして夕食から分かる通りの上流階級。
アデルは美術のこと、哲学のことがさっぱりで、エマは文学のことがさっぱり。色々と趣味が合わない。
自分の好きなことを仕事にすることが幸せと考えるエマは、アデルには物書きの仕事をして欲しいけど、アデルはそれを趣味程度とし、安定した生活ができる職業に就いたことにも不満はない。
こうしたバックグラウンドや価値観の違いから、ふたりの間にはだんだんと距離ができていった。
別れの決定打となったのは、アデルが浮気を、しかも男の人と浮気をしていたことがわかったからだけど、根本的な理由はふたりの考え方の違いなんだと思う。
だから本当に、恋愛の形はLGBTでも、異性愛者でも、なにも変わらない。

とにかくアデルががつがつ食べるシーンが多かった印象。
生きる活力と好奇心に溢れたアデルのキラキラした若さが、食事を通して効果的に伝わってきたように思う。

そして、どのシーンもじっくりゆったりと、まるで時間を切り取ったように撮影されていて、なのに全然だらだらしてない。
映画全体が美しい絵画のようで、どこのシーンを切り取っても絵になるような映像だった。

なんといっても、アデルとエマが交差点ですれ違うシーン。あれは100テイクくらい撮り直されたらしいけど、本当に1度見たら忘れられない素晴らしいシーンだと思う。
まざまざと思い出せるほどに鮮明で、エマの隠しきれない色気や魅力がぶわっと画面から出てくる感じ、そしてそれに強烈に引き付けられるアデルの表情!
この映画は女優さんたちの顔をすごいアップで撮影してるんだけど、だからより表情の細かい変化とかがわかった。
女優さんたちの演技力のすばらしさも。

あとはとにかくエマの魅力がすごい。
正直美しすぎてわたしもドキドキしてしまった。
エマがアデルの浮気を知って激怒するシーンはリアルすぎて映画だということも時間も忘れて作品にのめり込んでしまった。

にしてもフランスの高校生たちは文学とか哲学とか。こんなにしっかり自分の意見を持ってるの?教育の違いにびっくりだ。。
それに、アデルもエマも、芯がすごく強いよね。わたしはこう思ってる、ってことをまっすぐ伝える。みんなに同調したりしない。フランス人の気質なのかもしれないけど、かっこいいなあ〜って思った。
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