MasaichiYaguchi

アデル、ブルーは熱い色のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
3.8
運命的な相手に出会える人って世の中にどれだけいるのだろう?
ヒロインのアデルの場合、その相手が同性のエマだったということになるのだが…
カンヌ国際映画祭で監督と共にパルムドールを受賞したアデル・エグザルコプロスとレア・セドウという二人の女優たちが繰り広げる愛の世界は濃密で衝撃的だけど美しい。
性格や嗜好が同じだからといって関係が良好にゆくとは限らず、タイプが違うからこそ自分に無いものを相手に見出し、それに惹かれて関係が築かれることもある。
アデルは堅実な両親のいる庶民的な家庭で育ち、エマはアーティスティックで裕福な家庭で育っているので、二人の人格形成のバックボーンはまるで違う。
「一目惚れ」という言葉があるが、二人は出会った瞬間に運命的なものを感じ、やがて再会する。
アデルはティーン・エージャー、エマは年上といっても二十代、若い二人が両思いなら、一気に愛は燃え上がっていく。
ただ、その思いが純であればある程、そして愛が深ければ深い程、ちょっとした行き違いで壊れていく。
やがてアデルは学生から堅実な学校の先生に、エマは美大生から画家への道を歩み始める。
エマはアデルに文才を見出し、同じように創作の世界に来ることを期待するが、堅実さを信条とする彼女にはその思いが届かない。
出会った頃や熱愛時代は片寄せ合って歩んでいたのに、やがて二人は「分岐点」に辿り着く。
恋愛は異性間でも同性間でも変わらない。
上手くいってる時の至福感、嫉妬による焦燥感、愛を失う時の絶望感は同じだ。
終盤の二人の姿が印象的だ。
アーティストとして順風満帆で公私共に充実しているエマ、先生として認められて堅実に歩んでいるアデル。
だからエマの作品展に祝福に訪れたアデルは、自分のいる世界とエマのいる世界との違いを痛感して疎外感の中に沈む。
でも何か吹っ切れたようなアデルの最後の姿に前向きな希望を感じた。