えんさん

レッド・ファミリーのえんさんのレビュー・感想・評価

レッド・ファミリー(2013年製作の映画)
2.5
韓国国内の何気ない家族の風景、実はこの家族4人は北朝鮮から派遣された秘密工作員(スパイ)たちだったというコメディ。一家の隣に住むのは、韓国の普通の喧嘩の絶えない一家。この韓国一家と、北の偽装家庭のスパイたちが関わりを持つことで、次第にスパイたちの心にも動揺をきたしてくるという展開になってくる。韓国と北朝鮮という関係は、近年では南北の融和政策もあり、一時期よりは近くなった感はあるけど、韓国映画のネタ的には格好の標的にされているのは昨今全く変わっていない。北朝鮮=悪という構図は、韓国映画に限ったことではなく、ハリウッドのスパイアクションものでもアラブやアフリカ(最近はロシアもまた出てきたけど)のテロ組織の巣窟として、よく登場している。娯楽エンタテイメントとして、単純に楽しめる作品だったらいいものの、ここにイデオロギーの問題とか出されると極端に映画が窮屈なものになってくるのだ。

本作は家族(一方は偽装だけど)間の関わりを通じて、冷酷だったはずのスパイたちが徐々に心変わりをしてくるところに面白さを見出そうとしています。予告編を観る限りでは、なかなかそこはうまくできていそうで、きっと両国の考え方の違いや、スパイであることをバレまいと右往左往する楽しい作品かと思いました。序盤はそんな面が見えるものの、後半になるに従い、上記したイデオロギーの問題が出てきて、スパイたちの置かれる悲しい立場みたいなものが浮かび上がってきて、だんだんと映画が笑えない辛辣なものになってくるのです。かといって、お涙ちょうだいものに仕立てるのには話のオチが見え見えで、あまりに結末が出口のない悲しいものになっています。こういう悲劇にしたいのなら、最初からその方向に舵を切るドラマにしたほうがもっといいものになっていたと思います。

本作の製作総指揮、原案、脚本というところを担当しているのは、僕の大好きなキム・ギドク。さすがギドクらしい発想は面白いものだったとは思うのですが、その面白さが作品に結実しきれていないところは少し残念に感じてしまいました。