このレビューはネタバレを含みます
この映画では善と悪をはっきり分けて描いていないような気がした。
主人公のコブは、誰かのためではなく自分のために犯罪を犯しており、その点で「悪人」といえる。劇中では、犯罪から足を洗って子どもの元に戻りたいという自己中心的な動機で行動していた。
また、渡辺謙が演じるサイトーとの関係も、利益をエサに無理な仕事を押しつけられるという不健全なものだった。
任務中には仲間として協力し、絆も生まれるが、解決した後の飛行機のシーンでは感動的なやり取りはなく、
コブは報酬をきちんと支払うようにサイトーへ催促の電話をするだけだった。
しかし、任務中に確かに絆は生まれていた。
このように、この映画は物事の道徳的な善悪を明確にせず、リアルな人間像を描いていると感じた。
終幕はコマの回転の途中で終わらせることで、主人公がまだ夢の中なのか無事に現実に戻って来れているのかを明らかにしなかった。今もなお議論が交わされていることに納得できるような綺麗な終わり方だった