たくろー

ホドロフスキーのDUNEのたくろーのレビュー・感想・評価

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)
5.0
レンタルDVD・字幕で視聴しました。
フランク・ハーバート原作のSF小説「デューン」。デヴィッド・リンチの実写版が公開される何年も前に、この名作に挑んだ男たちがいた。アレハンドロ・ホドロフスキーとミシェル・セドゥーはそれぞれ監督とプロデューサーとして、映画に必要な才能を次々と見出していく。撮影直前での制作の中止、未完成ながら後の映画界に影響を与え続ける幻の大作を、制作当事者たちの証言から追ったドキュメンタリー。
という内容です。

デューンといえば、SF好きなら知らないものはいないSF小説界に燦然と輝く名作であり、また一方1984年の実写版の評判の悪さも有名です。
そして、ホドロフスキー監督といえば前衛芸術的な映画作品でカルト的な人気を持つ不二の映画監督として有名...ということなのですが、すいません、実はホドロフスキー作品は一本も見たことないのです...。

しかし、心配は要りません。原作と監督、どちらについても詳しくない方が見てもまったく問題ないドキュメンタリーです。

この映画の多くの部分を占めるのはホドロフスキー監督本人の証言インタビューですが、彼の撮った作品を知らなくても、しゃべり方から映画製作に関する誠実さが伝わってきます。
スタッフ集めや内容の構想を練っていた当時の回想を彼が語るとき、まるで現在制作が進行中の映画を語るときのように、本当に嬉しそうに語っているのです。
そして、出てくる名前が今では知る人ぞ知るビッグネームばかり。ホドロフスキーさんがそうであるように、観客側も完成したらどんな凄い映画になってしまうんだ!?とワクワクがとまらなくなってきます。

しかし、実際には制作中止になってしまったことはみんなが知っているわけです。名だたるスタッフが集まり、実際に作られた絵コンテ集を見ていく過程で、完成するべき映画への期待感が膨らむのに反比例して、それを実際には見ることができない悲しさも増していきました。

制作中止の経緯が語られるシークエンスは意外にあっさりとしたものでしたが、ホドロフスキーさんやセドゥーさんの当時の失意は計り知れないものがあります。
しかし、映画の制作が終わってしまっても、物語はそこで終了するわけではありませんでした。

語られるのはこのデューンという作品がが、あらゆる場所で他の映画に影響を与えていること。
ホドロフスキー監督が映画内に詰め込もうとしていた壮大なテーマが、形を変えて現実世界で姿を現していったことを知り、強烈な感動が沸き起こりました。
もちろんこの大作が完成を見なかったことは残念この上ないのですが、決して無駄な挑戦ではなかったのだと知って、目頭が熱くなります。

そして、最後に示されるのは、デューンのような大作でなくても、情熱を持って作られた映画は、現実を動かすことができるということ。
このドキュメンタリー映画自体も、その力を持つ映画の中の一本なのでした。